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2017年04月28日

バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ ヘンリク・シェリング 1967年録音


高校生の時だったでしょうか、この名盤に出会ったのは。有名なパルティータ第2番の15分近くに及ぶシャコンヌを聴いて不覚にも涙を流したのは。何故涙が溢れたのかはわかりませんが、1挺もヴァイオリンでなんというオーケストラの大音量とは違う大きな世界を生み出せ、胸を突き動かすことができるのだろうかと音楽の不思議さを考えさせる。
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バッハの無伴奏チェロ組曲ならまずフルニエ、無伴奏ヴァイオリンならシェリングという位、昔から定番中の定番として挙げられるシェリングのグラモフォン録音。ありきたりすぎるだろうと言われるでしょうが、未だにこのスタンダードながら録音も含めて必ずここに戻ってくるという録音です。それこそいにしえの名盤エネスコを聴いたりクレーメルを聴いたり、最近なら庄司さんの演奏も良かったですがやはりシェリングかと。

バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
ヴァイオリン:ヘンリク・シェリング
1967年 スタジオ録音
録音 4.40点  演奏  4.70点



この曲を聴いたことが無い、ピアノやオーケストラの曲ばかりを聴いています、独奏ヴァイオリンは苦手ですという方には、まずこの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番と第3番から聴き始めるのがいいと思います。シャコンヌを聴いて厳しい曲集だと思われるかもしれませんが、第3番のガヴォットみたいな活き活きとした曲もたくさんあります。

私は正直ギタリスト 山下和仁さんがギター用に編曲したガヴォットからこの曲集に興味を持ちました。リズミカルな旋律から中盤に急に深い世界に引き込まれてまたリズミカルに戻るというこの短い曲だけで独自の世界観があります。

辛口ですがホールトーンで少しは柔かく聴こえるクレーメルのガヴォット。

クレーメル盤も評価が高いですが、シェリング同様で旧盤派と新盤派で評価が分かれますね。

ただシェリングに関してはモノラルとステレオの差があるので断然こちらのステレオ録音に軍配を上げるべきだと思います。曲に関して言えばソナタよりもパルティータの方が自由度が高くバッハの羽根ものびのびとしているような気がします。聴き始めの方は別に1番のソナタからでは無く、その後に少し形式的なソナタに聴き進めばいいかと。この後も無伴奏のヴァイオリンのための曲には多くの作曲家が挑みましたが、ヴァイオリンのいろんな表情や表現の可能性を提示してくれるし、何より音楽を愉しく聴かせてくれる点でこのバッハの曲には及ばない。バルトークのものも素晴らしいですが、愉しさには欠ける。

シェリングの演奏の素晴らしい点は、前のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲でもそうでしたが、純粋に曲の良さを聴かせてくれるその点に尽きる。特に特徴は無いにも関わらず胸に音が突き刺さってくる。特にこのバッハは音楽の楽しさ・侘しさ・寂しさなどいろんな表情・感情をそのまま耳に届けてくれる。でも実は研究し計算しつくされた解釈と音色であることは間違いないのがいつものシェリング。

1976年に来日しパルティータ3番とソナタ1番他というバッハプログラムを東京FMが録音した来日公演のライブのCDがありますが、スタジオ録音に少し熱の入った演奏ですが基本的な解釈・音の出し方(恐らくはボウイング)は一緒。会場の息を呑むような空気感はこのライブ盤の魅力。

どちらかというとシゲティやクレーメル側の音色が厳しめのヴァイオリニストだと思いますが、それを感じさせないのがシェリングの音の不思議。自分の技巧や解釈を押しつけがましくするところが微塵もなく、あれやこれやと聴かせよう一瞬も感じさせないところが魅力なのかもしれないと感じます。「いい曲ですよね」と軽く思わせながら練られ切った演奏で聴かせてくれる。


シェリングのシャコンヌ。ライブです。信じがたい。
TDKのCDの解説文を佐藤康則さんという方が書かれているのですが、題名が「匿名のヴィルトゥーゾ」(笑)。しかしシェリングを表するのにこれほどいい文章は無いなという部分を少し簡略して抜粋。

「スタジオ録音を聴くと素晴らしく完成度が高いゆえに特徴が無い。しかし昨今発売されたライブなどを聴くにつれ、生でこんなに完成度の高い演奏が可能なのだろうか?という驚きに印象が変わった。オイストラフやミルシテインでさえライブでは若干の音程の揺れやリズムの乱れがある。シェリングの場合、基本的な解釈は変わらない、いやどちらかと言えば気持ちのノリが違うだけ。
オイストラフにも引けをとらない安定したテクニック、ハイフェッツにも勝るとも劣らない引き締まった美しい音色、ミルシテインにも匹敵する作品全体を見渡した揺るぎない構成力。でもこれだけの演奏をしているヴァイオリニストがいったい誰なのか見当もつかない。」

この名盤にもそれがピタリと当てはまります。シェリングの存在を忘れてバッハの音楽だけをしっかりと耳に刻印してくれます。ハイフェッツのようにテクニックが気になったり、チョン・キョンファのように憑りつかれている・・・といった感情を聴いている間に思わせない。崇高なバッハの世界だったり、リズミックなバッハだったり、ただ1挺のヴァイオリンが伝える音楽の力の凄さ。ただそれだけ。

面白そうなシェリングのマスタークラス。

無伴奏チェロのフルニエだと気品があるとかいえますが、このシェリングの名盤には端正という言葉も似あわないし、万人受けするとも言えない。まさしくおいしい料理を食べて「おいしい」としか言いようのない演奏。そして何度聴いても飽きるどころか、何度も感心してしまう。シェリングのバッハ録音(ライブ録音も含めて)にはいつもそれを感じます。

この名盤を繰り返し聴いた後に先ほどの東京ライブを聴くと、本当にこの曲の凄さは勿論、シェリングの凄さが本当に理解できると思います。因みにこの名盤SACD化もされてますが未入手。

e-onkyoでハイレゾ配信され始めましたが高い。
シェリング バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ flac 192kHz/24bit
そのうちセールをするだろうと虎視眈々と狙っています。因みに私が所持しているのはSHM-CDが出たての頃のCD。通常CDと比べてそういいとは感じませんでしたが・・・一番上のルビジウムカッティングされた通常CDの方が音がいいのではないかと思う次第。
タグ:名録音
posted by 悩めるクラヲタ人 at 07:05| Comment(0) | 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする