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2017年05月03日

シューベルト 「さすらい人幻想曲」 エリー・ナイ 1964年録音 +キーシンの演奏 


作曲家自身がうまく弾けず、苛立ちのあまり「こんな曲は悪魔にでも弾かせてしまえ」と言ったという逸話が残る「さすらい人幻想曲」。第2楽章の変奏曲主題が自作の歌曲「さすらい人」から採られているので、このような名を冠しています。彼のピアノ・ソナタと違って沈静的なところは無く冒頭からベートーヴェンのソナタ?というような鳴りっぷりで、テクニック披歴に相応しくコンサート映えもするので好まれる曲です。

ただ演奏の雰囲気演奏するピアニストによってかなり印象が異なります。私が最初に耳にしたのは名盤と言われるリヒテルのEMI録音。凄い打鍵だなぁというのと一気呵成に弾き切る彼の全盛期の記録でもあります。録音は当時のEMIならではのオフ気味な録音にもかかわらず強音では少し割れ気味で・・・
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さてドイツの女流ピアニスト エリー・ナイ(1982-1968)。知る人ぞ知る戦前戦後のドイツを代表するピアニストでアルゲリッチ同様女流という言葉の範疇に相応しくないピアニストです。彼女の詳細については過去記事をご参照ください。激しい信念をお持ちの方です。
・エリー・ナイのベートーヴェン ピアノ・ソナタの演奏を聴いて・・・
個人的にはベートーヴェンも得意としていたし、音色的にもバックハウスと似ていると思います。そんな彼女の「さすらい人幻想曲」を。CDとしてが入手難でデジタルダウンロード音源ですが。

シューベルト 幻想曲ハ長調「さすらい人」
ピアノ;エリー・ナイ
1964年録音 彼女82歳!
録音 4.30点  演奏  4.65点


※モノラルの旧録音もあるのでご注意を

彼女の晩年の録音集(ほぼステレオ録音で音質もいい)。AMAZONでもたまにしか出ないし、ヤフオクでも高値です・・・20,000円位が相場みたい。

印象的な「ダーン・ダ・ダ、ダーン・ダ・ダ」というダクティルリズム(長‐短短)の明確でこの曲全体を支配する冒頭の強打がありますがこの冒頭だけでナイの音に惹きこまれることでしょう。ぺダリングが独特かも。その年齢からは想像できない強い打鍵と存在感・風格のある音。この曲は切れ目なく演奏されますが、4つの部分からできています。第1部が勇ましい楽章、第2部が穏やかな緩徐楽章、続いて急速な3拍子の第3部、最後にまた華やかなアレグロで「ワルトシュタイン」にも作りが似ている第4楽章。実質はピアノソナタのようなものですが、その切り替わりのも見事なものです。シューベルトの中でも非常にドラマティックで全体の構成もしっかりと出来ている。

リヒテルの演奏。強打が・・・

ナイのピアノで演奏されるこの演奏は、この曲が作曲されたのが「未完成」を作曲した時期と同時期でもあり、晩年に差し掛かる頃ということもなんだか感じさせてくれます。力強さと第2部や第3部中間部のような晩年のピアノソナタ群の雰囲気もありますので、その辺の表情変化(しかもテクニック難)が求められる。まだ10代神童キーシン時代の演奏が非常に模範的で明晰。

カラヤンとのチャイコフスキー協奏曲、アバドとの合唱幻想曲も入ったいいとこどりのキーシンセット。
録音も良く一般的にはお薦め。安定したテクニックと第2部のような美しいひと時と激しく鳴る部分への切り替えも上手いし、曲に迸る感情の吐露を感じる。ただ・・・ちょっと無国籍的できれい達者過ぎるかなとも。

エリー・ナイのピアノはテクニックの衰えはそれほど気にならない。というかバックハウスやケンプのような技巧の衰えとはほぼ無縁、またハスキルやヘブラーのような弱音の細さもない。ドイツ人のピアニストですと言って聴かせたら「えっ女性のピアニストだったの?」と聴後驚かれること間違いなしです。全体の構成力がしっかりしていて自国の音楽を自信を持って手練れの音楽として演奏している。強打が特徴のピアニストですが芯とコクがありうるさい音色にならない。音色を聴いていると使用楽器は恐らくスタンウェイではなく、ベーゼンドルファーではないかと思います。その影響もあるのでしょう。

「月光」の演奏風景の一部。
矍鑠とした演奏ですなんていうのも失礼な演奏。彼女の得意とするベートーヴェンでもそうですが、全体の構成を考えた解釈で、左手の分厚い響きが非常に生きており、憧れを感じる第2楽章の中間部から後半にかけては音のその低音と高音のコンストラストで聴かせる。強打一辺倒でなく揺らぎない解釈への自信、それに加え音色の変化の巧みさと豊かさ、そして人間味・遊び心のある音色・響き。当然、最後のコーダの仰ぎ見る迫力も圧倒的です。音が割れ気味になっても何のその。でも凡百のピアニストと違い和声がしっかりしているので、耳障りには決してならない魔法。


ポリーニですが、何か?こちらも評判はいい。
ナイの演奏を聴いていると、ポリーニや優れたキーシンでさえ芸格の差というか、手に馴染んだ感が全く違うし、地に足のついたドイツ音楽を聴いたという充足感が他盤との圧倒的な差。

第4楽章では少し乱れもありますが、これも一つの芸・表現かと思わせるようなテンポ変化と溜めのようで効果的。優れた録音で残されたことが本当にうれしい名演です。珍しく音源付けます。
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●第2部

●第4部

彼女のベートーヴェンが聴きたくなりますよね。

MP3アルバムですが、皇帝と熱情がセットのこれを聴いてから、ピアノソナタ 30番~31番に進むのがお薦めです。「熱情」の最後は熱が入りすぎてコーダで1パッセージ多く演奏していて面白いです。
タワーでも在庫僅かみたい。
Beethoven: Piano Concerto No.5, Piano Sonata No.23 エリー・ナイ



忘れれてはならないピアニストの一人。コロッセウム社のCDの安定供給を望みますが、一縷の望みしかない。悲しい時代です。

入手し易く、昔から評価の高いコンヴィチュニーとのブラームス。
でもまずは皇帝と熱情からベートーヴェンは聴くべし。

もうすぐDECCAのハイレゾ音源特別セールも終了ですよ。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 17:07| Comment(0) | 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする