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2017年08月11日

プーランク 「ぞうのババール」 ジャンヌ・モロー&ジャン=マルク・ルイサダ 1994年録音 


先月末、フランスの名女優 ジャンヌ・モローさんが亡くなられました。私はあまり映画を見る方ではありません。なので、モローさんの名前は知っていても、映画は「死刑台のエレベーター」位しか見た記憶がありません。かなり昔ですね。
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映画界で長きに渡り活躍しており、映画大好きなピアニスト ジャン=マルク・ルイサダのような映画好きには神のような存在だったそうで・・・このCDを制作すると決まった時にはルイサダはかなり興奮気味だったそうです。このプーランクの語りとピアノのための音楽「ぞうのババール」はあまり録音も演奏もされないのが残念な位、魅力的な音楽です。その音楽とフランス語のニュアンスだけで幸せな一時を与えてくれます。ジャンヌ・モローさんを偲び聴き入りました。

プーランク 「ぞうのババール」
語り:ジャンヌ・モロー
ピアノ:ジャン・マルク・ルイサダ
録音 4.50点  演奏  4.70点


とっくの昔に廃盤ですが、タワーレコードさんが独自企画で継続して販売してくれているのはありがたいことです。
プーランク:ぞうのババール; サティ: ピアノ曲集 / ジャン=マルク・ルイサダ(p), ジャンヌ・モロー(語り)<タワーレコード限定>


カップリングはモローの語り付サティです。有名な「ジムノペディ」も含まれます。その他は渋い選曲ですが、独特の世界観を1時間堪能できる1枚。フランス色一色です。そのメインとなる1曲「ぞうのババール」は、フランスの作曲家 フランシス・プーランクが作家 ブリュノフの同名絵本に夢中になっていたいとこの子供たちのために書いた曲です。

内容は絵本らしく小象のババールは母象とともに散歩中、狩人に襲われ母象は撃たれてしまう。ババールは泣きながら森から逃げ、街に辿りつきます。運よく優しくしてくれる人間のおばあさんと出会う。街の生活は快適ながらも、友達の象や亡くなった母象のことを思いだしながら日々暮らしていた。そんなある日、いとこの象が街に現れ一緒に森に帰ることになる。森では丁度その時、象の王様が死んでしまい、次の王をどうするかという話になっていたのですが、いろんな経験をしたババールに王になってもらおうということになり、ババールは結婚と戴冠を行いめでたしというお話。
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ウィキペディアでは、「シューマンの子供の情景やドビュッシーの子供の領分と同類の曲」というようなことが記載されていますが、実際にはちょっと風合いが違います。ピアノの伴奏はそれほどメロディアスではありませんし、響きもロマン派・印象派的なところは皆無で現代音楽的です。初めて聴いた時にはこれが子供のために書いた音楽か?と感じました。今改めて聴くと、これは絵本をそのまま音楽に移し替えたものだと感じます。不思議な絵と色合いがある輸入絵本のようなものです。ひょっとすると想像力豊かで感性の強い子供の方が受け容れやすいのかもしれません。

演奏は録音も少ないので比較対象があまりありませんが、このモローとルイサダ盤があれば他は必要ないでしょう。冒頭の曲名・台本・作曲者紹介の口上からふっと違う世界に誘われるようなモローの語り口。フランス語の美しさとその語り口は、未来に渡って他の追随を許さないでしょう。若干ハスキーなその声もこの台本には相応しい。話の筋に合わせて声色を変えているところもあるかと思います。特に話し言葉の部分は流石名女優です。しかも子供に聞かせるような感じもしっかりとあります。


英語版ですね。話は頭に入ってきやすいですが、フランスの匂いが薄れる。この語りも上手ですが、アメリカの絵本になってしまっている。

ルイサダのピアノも色彩感と感受性豊かで、いろんな色合いを醸し出して聴き手の想像力を豊かにしてくれます。モローに合わせるだけでなく、しっかりとした存在力で大女優との共演にも臆さず見事な演奏。説明できないような独特な空気感があります。海外の絵本を手に取った時の匂い、ちょっと奇抜な絵と色使い、でもなぜか魅入られ引き寄せられる感覚とでも言いましょうか。

最後に「fin!」と締めくくられるのですが、モローとルイサダの音の絶妙なこと。「おしまい」という日本語では感じられないお洒落さがあります。フランス語独特のニュアンスには勝てない。しかしこの音楽と演奏は子供のための絵本というよりも、大人の絵本で品格がある。

舘野泉さんと岸田今日子さんの日本語版。聴いてはいないですが、これもありかも。昔、BSで原田知世さんが語りをしているのが放送されていました。

子供のためのようで大人のための洒落た一枚。ジャンヌ・モローさんの音楽界に遺した貴重な記録が埋もれないようにして欲しいものです。

ラベル:優秀録音
posted by 悩めるクラヲタ人 at 18:07| オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする