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2017年05月20日

バッハ マタイ受難曲 メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウo他 1939年録音


メンゲルベルクのマタイ受難曲。この名曲・名盤も随分忘れられそうな存在になってきました。録音は古いし、古楽器演奏に慣れた耳には奇異に聴こえるアゴーギクの連続。ただそれは物語と音楽にあったもので、現在の指揮者のようにいたずらにテンポをいじるのではなく、徹底的に楽譜を読み込んで綿密に解釈したもので、同一にしてはいけない。

この名盤もタワーレコードさんが独自企画で廉価CD発売してくれ、安定供給されているのは嬉しいです。しかし購入時に悩んだのは、このマタイ受難曲に関してはSPの板起こしCDで良好なのが幾つも発売されていること。私はオバートソンが復刻し廉価のNAXOS盤を持っていました。以前バッハのG線上のアリアを取り上げましたが、このマタイのおまけでついていたものです。↓
バッハ 管弦楽組曲第3番より「G線上のアリア」 メンゲルベルクの2種の録音
タワーレコードさんのリマスタリング説明では、「1952年LP初出時のマトリックス・ナンバーが記されたPHILIPSのアナログマスターテープよりハイビット・ハイサンプリング(192kHz/24bit)でデジタル化した上でCDマスターを作成」とのこと。さて結果は如何に。

J・S・バッハ 「マタイ受難曲」全曲
※ただしメンゲルベルクによるカットがあります
カール・エルプ(テノール)[福音史家]
ウィレム・ラヴェッリ(バス)[イエス]
ヨー・フィンセント(ソプラノ)
イローナ・ドゥリゴ(アルト)
ルイ・ファン・トゥルダー(テノール)
ヘルマン・シャイ(バス)
アムステルダム・トーンクンスト合唱団
ツァンクルスト少年合唱団(合唱指揮:ウィレム・ヘスペ)
指揮:ウィレム・メンゲルベルク
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
1939年4月2日 コンセルトヘボウでのライヴ録音
録音 3.20点  演奏  4.65点

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下記はタワーさんへのリンクです。安定供給してね。
メンゲルベルク/ACO バッハ: マタイ受難曲 (全曲)<タワーレコード限定>


演奏については最近のスマートな古楽器演奏に聴きなれた耳には大きな違和感を感じる演奏でしょう。第1曲だけでもお腹いっぱいになるか、噴飯ものの怒りすら感じる人もいると思います。第1曲だけでどんだけテンポを揺らすというよりもいじくるのかというような抑揚をつけています。人間の感情をここまで露わにするかという程オーケストラ・独唱および合唱に表情をこってりとデコレーションしたマタイ受難曲です。

しかし、古い録音を乗り越えて胸を打つのは、楽譜を徹底的に読み込み自分の身体に染み込ませ、それをメンゲルベルクの強い表現意欲と心の叫びを綿密なリハーサルで各奏者に微に入り細に入り徹底した演奏だからでしょう。

私がこの演奏を知ったのは、宇野功芳氏の「オーケストラのたのしみ」という本からでした。

絶版ですな。1円で買えるみたい。

しかし、まだ当時はLP時代ですし、中学生にとって長時間の宗教曲はきついし、複数枚にわたるマタイ受難曲は財布が許さない。仕方なく抜粋でしかも廉価盤LP(フォンタナだったかしら)で聴きました。このマタイ録音の殺し文句「聴衆の咽び泣きも録音されている」第47曲も入っていたので当時としては十分。普通の演奏のマタイを聴く前でしたが、このアルトのアリア第47曲はこれこそ擦り切れるほど聴きました。こちらも涙目になりながら・・・

これは普通の演奏の47曲。

板起こしです。メンベルベルクの咽び泣き付き47曲。

リヒターで聴いた時に「物足りない・・」と思う程、独奏ヴァイオリンのポルタメントがはまっている。録音時のオランダの状況を考えれば咽び泣いてしまうのもむべかるかな。この曲だけのためにも持っていてもいい位の演奏です。長くなるのでこの演奏を一言で表現すれば、フルオーケストラでダイナミック&ロマンティックの極みな演奏です。エルプの福音史家も見事で、悲しみにくれるときの声を絞る巧さと言ったら。第47曲寸前その声の絞りを駆使する場面、録音の加減でぽつぽつと音が切れ切れになりますが、それすら味方につけるような表現です。

ただ長丁場のこの曲ですから、ここまで感情移入と大仰な表現たっぷりでは先程の47曲のようにツボにはまる曲と逆に「さすがにそれは…」という部分があります。それはリヒター盤やアーノンクール盤、ガーディナー盤どれにでもそういう部分はあります。ただ、落差が良くも悪くも激しい(笑)

さてこのタワーレコードのリマスタリングですが、結果としてはいいと思います。LP初版時のマスターをPHILIPSがどのように作成したかは不明ですが、SP板起こしのNAXOSなどの盤よりも意外にもノイズが多い。そもそもが映画サントラ用のテープ録音なので、そのテープからマスターを作成したと考えるのが妥当かと。

そう考えると板起こし盤は、テープ→金属マスター→SP→CDという工程を踏むので工程多く、今回のテープ→マスターテープ→CDという点では音質劣化は少ないのかも。またマタイ受難曲をSPで聴こうと思うと凄い枚数になりますが、半世紀以上経った今になってすべての盤面がいい状態で残されている訳はないので、早期に作成されたマスターテープは貴重。テープ劣化の方が上記工程を踏むよりはましなのかもと考えます。


メンゲルベルクのマタイのyoutubeありますが全曲なので。コンチェルトでお茶を濁します。

ノイズが多いのは当時の技術を考えれば当たりまえで、SP復刻の方がノイズが少ないというのも変な話。(しかしノイズそのままを売りにするオーパス蔵盤は聴いていません)このタワーのCDではノイズの変調がはっきりと聴こえます。オリジナルをそのままという感じ。少し電波の悪いAM放送を安いモノラルラジオの前で有難く聴いているような気持ちになります。

しかし、生々しい。NAXOS盤はノイズ少な目でかなり良好な復刻ですが少し聴いていると疲れるし、独唱や合唱の分離が悪い。全体の録音状態を均一にするためにノイズ調整を行っていると考えられ、その影響か聴衆の咳払いのリアルさ、木管楽器(特にオーボエ)・チェンバロの音色感が後退している。独唱も少し金属的で残響ではなくエコーかなと思える部分も。

タワーレコード復刻はノイズは恒常的にはっきりとノイズがそのままで変調もある。しかし上記の気になる部分はこちらが勝る。全体的にこの時代としては優秀でコンセルトヘボウの残響も豊かに入っている録音ですが、それをストレス無く聴くことができます。第47曲などLPで聴いた時の感動が久しぶりに蘇ってきました。咳払いなどがリアルというか温かく、ステージ上の椅子が軋む音なども近い。そもそもが録音レベルが高いのか合唱のフォルティッシモでは音が割れてしまうのは仕方がないとあきらめる。低音の質の良さもタワー復刻が上かな。

唯一の疑問点。第1曲が始まる前の指揮台を叩く音。はっきりと編集点がありますし、このカカッという音の後に振り上げて演奏開始までの間が少し違和感。実際に指揮真似すればわかります。明らかにここだけ音も大きい。この指揮台を叩くのは確かにメンゲルベルクの特徴ですが、フルトヴェングラーの足音付バイロイトの「第9」みたいな謎が残ります。

長い記事ですが最後に他の復刻CDとの比較に相応しい部分を。第33曲のソプラノとアルトの声の分離と突然襲ってくる合唱のにごり、第34曲冒頭のフルートとオーボエの絡み合い、第46曲の最初の部分の聴衆ノイズと福音史家・テノールの声の伸びやかさとピアニッシモの表情、第47曲のヴァイオリンの音色感とアルトのフォルティッシモに濁りでしょうか。


彼の耽美的な部分と硬いフォルテがよく感じられるワーグナーのトリスタンを。

このCDは、まず最初にマタイを聴くという方にはカットもあるので向いていませんが、古楽器版で興味を持ちリヒターを聴き軽く衝撃を受けて聴き込んだ後に聴くのが相応しい。バッハの生きた時代にここまでドラマティックに演奏されたとは思えませんが、バッハの音楽の懐の深さを思い知らされる演奏です。

演奏者と共に憂い悲しみ泣き、最後に考えさせられる演奏です。宗教音楽で演奏時間も非常に長いですが、クラシック音楽の奥の深さと真の感動を教えてくれる永遠の名盤として語り継がれるべき記録です。
マタイ受難曲をもう少し普通の演奏でという方にはリヒターの演奏を。過去記事はこちら↓
バッハ マタイ受難曲 リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団 1958年録音


・作曲家別の過去記事を探すにはこちらが便利
→ クラシックの名曲・名盤 作曲家別記事まとめ
posted by 悩めるクラヲタ人 at 10:32| Comment(0) | TrackBack(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月13日

ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」全曲 C・クライバー/シュターツカペレ・ドレスデン 1973年録音


このジャケットが脳裏から離れませんねぇ。
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今はあまり流行らないのか名曲から外れたのか演奏されているのかわからないし、録音もあまりされないウェーバーの歌劇「魔弾の射手」。序曲と狩人の合唱位しか演奏されていないのでは無いかと思ってしまいます。録音に関しては「どうせ録音しても、みんなC・クライバーと比べられるだけだから・・・」と逃げているのかも。読み替え演出しにくい、古臭い勧善懲悪的な筋書きが魅力的ではないのも一因でしょう。。

ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」全曲
シュライアー(T)、ヤノヴィッツ(S) 
マティス(S)、アダム(Bs)
指揮:カルロス・クライバー
シュターツカペレ・ドレスデン及び合唱団
録音 4.35点  演奏 4.60点



ハイレゾ配信もされています。
クライバー 「魔弾の射手」全曲 flac 192kHz/24bit



C・クライバーのデビュー録音でもあり、その名前を世界に知らしめたのが1973年録音の当CD。グールドのゴールドベルク変奏曲並みに今聴いてもその新鮮さと鮮烈さは色褪せません。スタジオ録音?と思う程テンションが高く、またアリアにおける歌手陣の見事さ(気味の悪さから美しさまで)で超える録音ができそうな演奏陣はもう求め得ないでしょう。スタジオ録音にもかかわらず、クライバーのテンションと微妙に合唱などとずれもありますが、そこがライブっぽいのでしょう。しかしザ・ドイツ・オペラという曲ですが、クライバーが振ると無国籍的な演奏になりますね、いい意味で。

父君の序曲演奏です。

録音は今になっては少し古臭い録音方式(射撃の音の追加の仕方・ソロ楽器への明らかなクローズアップなど)ですが、グラモフォンが行ったオリジナル・イメージ・ビット・マッピング、所謂OIBPが一番はまった好リマスタリングで現役盤として十分通用します。LP・初版CDより分離が良くなった気がします。シュターツカペレ・ドレスデンの木質的な響きを良く捉えているし、響きも豊かながら音の輪郭はしっかりしている好録音。オフ気味ではありますが、発音がしっかりしている歌手陣と歌の時は声にクローズアップする録音のため表情変化がわかりやすい。アナログ的な柔らかな聴き疲れしない録音です。

残念な点は台詞は別の人が担当している点(後年の「こうもり」録音のオルロフスキー男爵の男の裏声よりはずっとまし(笑))、効果音が古臭い、特に台詞時に急に森での会話感を出そうとする残響付加位でしょう。そんなの関係ねぇという位に他の部分が優れているので気にならなくなりますが。

有名な序曲リハーサルと実演の映像。

演奏は「作品をリフレッシュして、見違えるように生き返らせた」という文句が誇大広告でない稀な例。しかもホルンの音は残響豊かで朗々と弦楽器・木管楽器には焦点をぐっと当ててくれていて、当時のシュターツカペレ・ドレスデンの温もりのある音調を感じ取れます。デビュー盤にして後年まで語り継がれるC・クライバーの超名盤です。アダム、シュライヤー、ヤノヴィッツ、マティスなど歌手陣も懐かしい名前ばかりですが、みな全盛期の頃で嬉しい。個人的にはクライバーの正規CDオペラ録音「こうもり」「トリスタン」よりもこの録音が一番条件が揃っていていいと思っています。

狩人の合唱です。

さて、最後に疑問点。恐らく実際の歌劇場でクライバーは「魔弾の射手」をそんなに指揮していない。ドレスデン国立歌劇場はおろかこの後に懇意となるバイエルン国立歌劇場ですら指揮した形跡がない。クライバーがこの作品をまとめてレパートリーに取り入れていたのは、コンサートリストを見る限り1968年だけでその時はシュトゥットガルト州立歌劇場でした。序曲は1980年代まで演奏していますが。

だから、なぜ大事なデビュー盤でそれほど得意演目としていない「魔弾の射手」にしたのだろうと今思います。結果オーライですが。しかもこれだけ素晴らしい演奏が出来るのに舞台に挙げなかったのだろうと不思議です。これだけの歌手と条件を実際の舞台で「完璧に」演ろうとすると金がかかるしスケジュール調整が厳しいからかな?

今も昔もカタログに残っているのは、上記マタチッチ盤とクライバー盤位。

私はこれはレコード会社 グラモフォンからの要請で「カラヤンやバーンスタインは振らないし、アバドもあまり向いてない。過去にこれぞという名盤が無いので」とクライバーに提案したのかもしれません。彼の一番気にする父君(エーリッヒ・クライバー)の録音も無いですから「OK」と答えたと想像します。

最近ではハーディングが映像で出してますが、食指が全く動きませんねぇ。

昨日聴きながらクライバーの冊子を読み気づいたことと、「そういや魔弾の射手って最近名曲って聞かないなぁ」と感じ、クライバーよりも「魔弾の射手」復興を目的としたブログでした。

クライバーの若い頃のリハーサルDVDです。字幕はないですが、輸入盤もあります。

「こうもり」序曲の日と気分と緊張感がまるで違う。クライバーの気難しい一面が垣間見える記録ですね。


posted by 悩めるクラヲタ人 at 10:10| Comment(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月10日

ワーグナー 楽劇「神々の黄昏」 カイルベルト/バイロイト祝祭管弦楽団 1955年ステレオライブ


なんて人は熱しやすく醒めやすいのでしょう。1955年でバイロイトのステレオライブがあると熱狂したのは今や昔。入手難にすらなりつつある。ショルティの指輪は未だに高音質化されるのに。
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ステレオ初期の実験的録音のためムラはありますが、ショルティのスタジオ録音より音は生々しいし、歌手がやはり素晴らしい。特に「神々の黄昏」は録音が安定しているし、カイルベルトの指揮も一番いい。

ワーグナー 楽劇「神々の黄昏」
ヴォルフガング・ヴィントガッセン
アストリッド・ヴァルナイ
ヘルマン・ウーデ
ヨーゼフ・グラインドル、他
指揮:ヨーゼフ・カイルベルト
バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団
1955年 バイロイト音楽祭ライブ
録音 4.15点 演奏 4.55点



カイルベルトの指揮は質実剛毅。後年のベームのバイロイトライブみたいに金管がよく鳴り、多少耳につきますが凝縮しすぎず響きの中にも木質的な香りがあります。ベームほどオーケストラを縛り付けていない。またマイクの位置もあるのでしょうが、やはり蓋に覆われたピットで燻されて沸き上がってくる感じが大きい。

歌手は第2幕の人間模様の泥々した感じを声色だけで聴かせてしまう。いかにもワルなグラインドルやナイトリンガーの声。ヴイントガッセン、ヴァルナイの全盛期で最後までスタミナが切れない絶倫さ。邪魔な演出はいらない。これで十分。


指輪セット。ジークフリートは音質が劣る。

あぁ何故この実験録音を1956〜1958年にしなかったんだ!というたらればはありますが、レコード的にはカイルベルトの方がよかったとも思う。クナッパーツブッシュだとマイクに収まりきれないだろうし、歌手ともズレが大きく、アンサンブルに傷が多いですので。(しかし、総合感銘度はクナに軍配)

最近はティーレマンのバイロイト録音がよく発売されますが、まだまだ格が違うなぁと。なにより歌手が全然及ばない。

録音技術も技術的には進歩したが、「音楽的」に進歩したかは微妙。ピーター・アンドリューとゴードン・パリーの採算度外視の挑戦に感謝。

カイルベルト復権の代名詞的録音も一時的なもので消え去るのでしょうか?それとも現代人に4時間もかかるワーグナーの楽劇自体が時代に合わなくなってきたのか。

確かにゆっくり対訳見ながら耳を傾ける時間は私にもありませんので…「ニーベルングの指輪」もバイロイト以外では消え失せてしまわないか心配。22世紀に残るのは「ワルキューレ」第1幕とワルキューレの騎行だけ?

現代人には抜粋で十分なのかも。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 08:36| Comment(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする