中高年の健康管理には「サントリー健康食品オンラインショップ」

2018年02月17日

シェーンベルク 「ワルシャワの生き残り」 シェル&アバド/ECユースo 1978年ライブ録音


第2次世界大戦のナチスによる惨禍を後世に伝える芸術作品として、絵画としてはピカソの「ゲルニカ」が挙げられるのかと思いますが、クラシック音楽でそれを挙げよと言われればシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」と即答します。この曲にであった時の衝撃は未だに色褪せない。男性ナレーション(正しくは高低など楽譜に指示があります)と合唱及びオーケストラによる作品です。
Schoenberg-Arnold-03.jpg
ナチスの強制収容所 アウシュビッツでの迫害を写真で切り取ったかのような音楽による生々しい情景描写。そこにシェーンベルクの考案したシュブレッヒテンメ(語り)と十二音技法が見事に噛み合っています。ベルクの「ヴォツェック」とともに十二音技法の代表作としてもっと知られてもいい作品です。
これほどの重い内容ならば長大な作品になりそうなところを、7分ほどの曲に凝縮することにより緊張感と衝撃が詰め込まれています。

最初に出会ったのが
シェーンベルク 「ワルシャワの生き残り」
語り:マクシミリアン・シェル
指揮:クラウディオ・アバド
ECユース・オーケストラ
ウィーン・ジュネス合唱団
録音 1979年 ザルツブルクでのライブ
録音 4.10点 演奏 4.60点


これは再発されたもので、1990年代にも発売されたものを所持しています。当時レコード芸術の輸入盤広告欄で「燃えるアバドの真骨頂が聴ける演奏」と書いてあり、ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ムソルグスキーの「禿山の一夜」(原典版)など他の曲を目当てで購入したのですが・・・シェーンベルクがとにかく衝撃。
他の曲、特にプロコフィエフの「ロメジュリ」からのタイボルトの死は圧巻。録音だけが少し残念。

語りのマクシミリアン・シェルは映画「ニュルンベルク裁判」でアカデミー賞主演男優賞を獲得した名優。その劇的で迫真の語り。そして若い演奏家たちのアバドに喰らいつくような演奏。そして曲の凝縮力に唖然。決して難しい英語でない語りだったこともあり、曲の内容も知らない状態でしたがすぐに何を表現・描写しているのかはわかりました。演奏自体はちょっと荒い部分もありますが、そこに慣れた感じがしないので逆にいい。
photo.jpg
若い!

主題は「ナチスによるユダヤ人迫害」。ワルシャワの収容所で生き残った男の体験談をもとに、シェーンベルク自身がテキスト作成、語りは英語中心ですがドイツ兵の台詞はドイツ語、最後の合唱であるユダヤ教の祈祷文「シェマ・イスロエル」(聞け、イスラエル)がヘブライ語となっています。

語り部の一部を抜粋。
私は何も思い出せない。ずっと無意識でいたに違いない。ほとんどの時間を。覚えているのは唯一、あの荘厳な瞬間だけだ 。彼ら全員がまるで事前に示し合わせたかのように歌い始めたときのこと。古い祈りを。それは何年も放置されていたもの忘れられていた信条。だが私には全く記憶がない。どうやって地下に至りワルシャワの下水道に暮らすことになったのか・・・かくも長い間。

その日もいつものように始まった。起床ラッパはまだ暗いうちに鳴った。起きろ!お前が眠っていようと、心配で一晩中目を覚ましていようともだ。お前はずっと離れ離れだ。お前の子らから、お前の妻から、お前の両親から、彼らに何が起こったのかは分からぬのにどうして眠っていられよう?
(中略)
一分以内に俺は知りたいんだ。何人ガス室送りにするのかをな!号令しろ。彼らは再び始めた。初めはゆっくりと。一、二、三、四 。次第に速く、更に速く。一層速くなってついには野生の馬の駆け足のように聞こえてきた。そして突然 そのさなかに彼らは歌い始めたのだ。「聞け イスラエルよ」と・・・・
(ヘブライ語で祈祷文「シェマ・イスロエル」が歌われるというか叫ばれる)


読んだ後に聴くと戦慄が襲います。youtubeで「Claudio Abbado and Maurizio Pollini 1978 」と検索すると映像があります。

この詩に12音技法でオーケストラによる伴奏がつくのですが、シェーンベルクの怒りが濃密で緊張感が一瞬たりとも途切れない。耳を奪われ、身体ごと持っていかれるような感覚に襲われます。もっと知られて後世に戦争の恐ろしさを伝える音楽として残されるべき作品だと思います。



アバドとシェルの語りが脳裏に焼き付いて他の演奏では生ぬるい感じがします。後にアバドはウィーンpoと録音しますが、語りも違いますし、大人しいアバドでこの演奏に比べると物足りない。


ケーゲルの演奏も家にあります。流石はケーゲルで冷血な演奏です。これも素晴らしいですが、語りはシェルに比べ劣り、録音が少し古い。オーケストラ演奏自体は緻密で細部が良く見えます。


「モーゼとアロン」の最後の余白に入っていて、当初気づかなかった・・・


ラトルでもキレキレの時のアバドには敵わない。

シェーンベルクの作品の代表作と言っても過言では無いのかと。彼の考案した12音技法とシュブレッヒテンメ(語り)がここまで見事に融合し、内容が伴っている作品はないと思います。「浄夜」よりももっと聴かれていいし、知られてほしい名曲です。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 20:59| Comment(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月10日

ヴェルディ 歌劇「ファルスタッフ」 ジュリーニ/ロサンジェルスpo 1982年ライブ録音


ヴェルディのオペラはそれほど聴くほうではありません。聴くのはクライバーの「椿姫」「オテロ」、ムーティの「オテロ」DVD、ジュリーニかトスカニーニの「ファルスタッフ」位でしょう。「仮面舞踏会」「リゴレット」「アイーダ」などは全く・・・一番良く聴くのはやはり「レクイエム」でしょう。序曲集や間奏曲集は聴きますが、どこか苦手意識があるのか全曲はちょっと敬遠気味。
a.jpg
悲劇ばかりというのも苦手の原因の一つでしょうが、唯一の喜歌劇「ファルスタッフ」は肩の力が抜けていて楽しい。ワーグナーと言い最後の作品は喜劇を選んだのは興味深い事実です。20世紀のファルスタッフ歌手と言えばタディですが、カラヤンの指揮がちょっと重すぎる。

「ロスのオーケストラにオペラの愉しみを教えたくて」とジュリーニが久しぶりにオペラを指揮したブルゾンとのCDがお気に入りです。

ヴェルディ 歌劇「ファルスタッフ」全曲
レナート・ブルゾン
カーティア・リッチャレッリ
レオ・ヌッチ
ルチア・ヴァレンティーニ=テッラーニ
バーバラ・ヘンドリックス
ダルマシオ・ゴンザレス
マイケル・セルズ、他
ロスアンジェルス・マスター・コラール
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
1982年 ライブ
録音  4.50点   演奏  4.60点


輸入廉価盤。なぜかベームのモーツァルトもそうですが、この廉価シリーズは音がいい。国内盤は廃盤状態・・・

ムーティもDVDで見ましたが、やはりこのジュリーニの久しぶりに楽しそうにオペラを指揮する演奏に心惹かれます。オーケストラも楽しそうに演奏しています。多少アメリカのオーケストラ特有の音色の明るさが顕著ですが、このドタバタオペラには逆に合っている。明晰な木管の絡み具合や明るい弦楽器・フルート・トランペットの音色です。それがまたジュリーニの采配で歌を邪魔しないというか華を添えるような名伴奏。

歌手陣は今考えると非常に豪華ですね。当時ロッシーニ歌手として名を馳せた少し強面のテッラーニ(笑)、可憐なヘンドリックス、名脇役ヌッチ、タディのような滑稽さには少し欠けますが安定感のあるブルゾン。彼らもジュリーニが久しぶりにオペラを振るジュリーニの下で歌うのが楽しそう。少しゆったり目のテンポですが、一音一音慈しむかのような流れのある演奏で、それが逆に滑稽さを助長しているような気もして微笑ましい。見事な演奏ではありますが、トスカニーニの指揮ぶりはファルスタッフには少しストイック過ぎる気がします。


ムーティのヴェルディ愛は半端ないですが。オテロなど悲劇向き。





1950年代はマリア・カラスの伴奏やミラノ・スカラ座の音楽監督などオペラ指揮者として大活躍をしていたジュリーニですが、1960年代に入るとパッとオペラから手をひいてしまいました。いろんな葛藤・思惑が錯綜するオペラ座というのが、優しいジュリーニにはきついのもあったでしょうが、全てにおいて責任を全うできない(上手くいかない)のが完璧を求める彼には辛かったみたいですね。

「音楽以外のことに関しては全く関与しなくていい」という破格の条件で、ロスアンゼルスpoの音楽監督を引き受けた話は有名です。要は好きな曲を好きに指揮していい、団員の管理やオーケストラの運営は経営陣がやるからというのは凄い条件です。良好な関係でしたが奥様の看病があるからという理由で別れを告げ、ヨーロッパに戻ったジュリーニ。このアメリカ時代、シカゴsoやこのロスpoとの共演時代が一番というジュリーニ・ファンも多いですね。


比較的録音の良いジュリーニのオペラ録音は、あとウィーンpoとの「リゴレット」位しか残っていません。

そちらも名盤の誉れ高いですが、こちらの「ファルスタッフ」の方がじわじわと評価が上がっているような気がします。ロスアンゼルスだけではもったいないと、同じプロダクションでロイヤル・オペラ座でも取り上げました。こちらもマニアの間では貴重な映像として有名。私も所持していますが、楽しそうな雰囲気を見ることができるのはいいのですが、やはり音質に難がありこちらのCDの方が手に取ることが多い。


ヴェルディのオペラは苦手という方も是非「ファルスタッフ」位から聴き始めると面白いと思います。有名な序曲やアリアはありませんが、楽器と人間の声が戯れる娯楽の殿堂を堪能できます。

ラベル:名録音
posted by 悩めるクラヲタ人 at 22:30| Comment(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

ビゼー 歌劇「カルメン」 プライス、コレルリ&カラヤン/ウィーンpo 1963年録音


奇跡の1枚というか、これぞレコード芸術と呼べる録音だなぁと思うCDは少ない。私はカラヤン肯定派ではありませんが、優れたアーティストでありレコード芸術家であることは認めざるを得ません。

ライブ録音ではなく、レコーディングにおいて企画と実質プロモートまで掌握できた音楽家は少ない。数多くの録音をして天文学的な売り上げを記録しているカラヤンですが、どれだけが後世に残るかどうかはわかりませんが。

$_57.jpg
その中で後世に残るべきにも関わらず、何故か不遇な扱いを受ける彼の名録音の中にビゼーの「カルメン」があります。正規に2回録音を残していますが、所謂イエローレーベル グラモフォンに残したベルリンpoとのデジタル録音の方が有名。

当時飛ぶ鳥を落とす勢いのカレーラスとバルツァのコンビでデジタル録音ですから当然というべきですが、演奏・録音を含め圧倒的にウィーンpoとの旧盤の方が優れています。カラヤンはやはりオペラ指揮者としては超一流だった、それも1960年代がピークだった証左となる1枚。

ビゼー 歌劇「カルメン」全曲
カルメン:レオンタイン・プライス(ソプラノ)
ドン・ホセ:フランコ・コレルリ(テノール)
エスカミーリョ:ロバート・メリル(バリトン)
ミカエラ:ミレルラ・フレーニ(ソプラノ)他
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団及び少年合唱団
合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ!
録音  4.60点   演奏  4.70点


定価でも10,000円と高いですが、ハイブリッドSACDで買うだけの価値があります。


音質にはこだわらないという方にはこちらの廉価CDを。

顔ぶれを見ただけでもどれだけ贅沢な布陣で臨んだか、カラヤンとレーベルの本気度が伝わってきます。絶頂期のプライスとコレルリそしてメリル、まだ若き瑞々しさに溢れていたフレーニ、そして合唱指揮はバイロイトでも手腕を振るった隠れた名匠ヴィルヘルム・ピッツ。今に至るまでピッツを超える合唱指揮者はいないと言っても過言ではありません。


若いカラヤン。この録音とは別演奏の前奏曲映像。

この録音はRCAからの発売ですが、実質はDECCA録音。プロデューサーはカルショー、エンジニアにはゴードン・パリ―、ジェームズ・ロックとステレオ初期の盤石の布陣。アーティストが専属契約で縛られていた時代に、DECCAとRCAで提携していた時期でアーティストを貸し借りした関係でRCA発売となった経緯の1枚。発売当時はソリア・シリーズという豪華な装丁でワンランク上のターゲットを狙ったシリーズの中での企画なので、本気度が今でも音から伝わってきます。

昔から名盤で名録音と謳われていたこの「カルメン」、上記レーベルの複雑な関係で生まれた産物だったことと、知名度としては売りやすい新盤があるために長らく廃盤の憂き目にありました。たまに見るとしても、リマスタリングも適当な抜粋盤しかありませんでした。

今は国内盤がありますが、昔は輸入盤しかなく探すのが大変でした。全曲も廉価で発売されたものの、1963年にしては優れた録音だなぁと思ったくらい。演奏に関しては素晴らしいのですが。それゆえ結構初期LPは高値取引されていました。

今回紹介したCDは、日本BMGが発売当時の扱いと同等にしてマスタリングと装丁に徹底的にこだわり抜き、この名盤を見事に復活させた日本限定の企画。リマスタリングはXRCDなど日本の誇るエンジニア 杉本一家氏。正直「高いなぁ」と悩みましたが、限定発売で恐らく将来プレミア価格になるだろうと予想し、半分投資の意味合いもかねて購入。結果は近年まれに見る日本レーベルの誇れる仕事でした。これは売れない・・・


花の歌。コレルリとウィーンpoの静かなる戦い。

演奏は以前紹介したクライバーとウィーンpoとの名演をスタジオ録音で成し遂げたような名演。使用している版が、当時一般的だったエルネスト・ギロー校訂のレチタティーヴォ入りのグランド・オペラ・スタイルの演奏なので少し違和感があるかもしれません。前奏曲の位置など多少曲の順番が違います。





歌心に溢れ切れ味も鋭い。クライバーのように指揮者主導(実質的にはカラヤンが締めてますが)でなく、歌手・指揮者・オーケストラ、そしてプロデューサー・エンジニアの競演です。みな、俺が俺がと主張してきますが、これが見事に結実した奇跡のような記録。1963年録音とは信じがたい生々しく奥行きとレンジの広い録音。そんじょそこらのやっつけライブ録音とはレベルが違う。当時のウィーンpoの音色をここまで捉えた録音も無いでしょう。

聴きどころ?全てと言っても過言では無い位、隙の無い出来の悪いトラックが無い。それが録音に至るまで。冒頭の有名な前奏曲の1音目から、一転した第3幕の静けさと背後で芽生え育っていく嫉妬の念、そして爆発する第4幕全体と最後の切れ味鋭い2つの総奏和音。カラヤンがウィーン国立歌劇場に君臨していた最終期の録音でもあり、全て手中に入っていて真の全盛期。

録音陣もカラヤンの言いなりでは無く、まだレーベルやエンジニアの力が強かったですから、レーベルの想い・音へのこだわりが匂い立ち、カラヤン晩年の機能美でガンガン鳴らしまくった演奏とは一味違うコクのある録音と音色です。


歌手・合唱に関しては、何も申し上げることはありません・・・・「これ以上、何を求めようか」という名唱の連続。しっかりと芝居も出来ている。これでホセが全盛期のドミンゴだったらどうなったかなと思う位の贅沢な悩み。ウィーンpoの木質的な響き(特に革張りのティンパニの音が印象的)も素晴らしい。

艶めかしい弦楽器、特にチェロの麗しさとコクのある音色は今ではもう聴けない。木管楽器の絡み合い、決してうるさくならず意味深い音を聴かせる金管楽器。列挙すればきりがない位のまさにレコード芸術の逸品。

クナッパーツブッシュのウェストミンスター録音よりも、不幸な運命を持つ録音で出ては消えの繰り返し。この日本盤は世界に誇るいい仕事です。高い!と思われるかもしれませんが、今の通常SACDが3,000円前後と考えれば妥当。下記の通り装丁が凄い・・・他国ではこんな手間のかかることしないでしょう。
img_0.jpg

ちなみにCD音質でも素晴らしいリマスタリング。黄金のDECCA時代のオペラの名盤もこれ位の気概で日本独自企画で復刻してくれれば売れるだろうに・・・こんな豪華な装丁でなくていいので。デル・モナコ、ティナルディ、バスティアニーニ、セラフィンなどが生き返るだろうにと思わせる切望、望蜀の念が沸く朝でした。レコード芸術の面でメイド・イン・ジャパン復活を期待して。

因みに手に入りやすい廉価新盤はこちら。お薦めしません。重苦しいし派手派手しいので。

posted by 悩めるクラヲタ人 at 20:57| Comment(0) | オペラ・声楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする