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2017年05月17日

バッハ ゴールドベルク変奏曲 グレン・グールド 1955年録音

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グールドのゴールドベルク変奏曲の録音は、20世紀のクラシック演奏史の中で最も重要な意味を持つ録音だと思います。これほど衝撃を与えた演奏は後にも先にもなく、録音されて半世紀を経った現代にもその演奏は聴く者に強いインパクトを与え続けています。そういう意味ではフルトヴェングラーにバイロイトの「第9」さえ凌ぐ存在とも言えます。

バッハ ゴールドベルク変奏曲
ピアノ:グレン・グールド
1955年 スタジオ録音
録音  3.75点   演奏  4.70点


3枚組のCDで、1955年と1981年の再録音、そして1955年のアウトテイクも含まれています。彼の解釈を理解するには便利ですし、音質についてもこれで十分だと思います。

バッハ=凄いけど渋く難解、そして面白くはないというイメージを覆した演奏です。この演奏が無ければ、そしてこの後の一連の彼のバッハ録音が無ければ、今のバッハの鍵盤楽曲の認知度はかなり変わっていたと思います。彼にとってこの録音はデビュー盤となりますが、選曲に当たってはCBSからかなり反対されたが押し切って録音したものです。バッハ=売れない、しかもランドフスカの名演がありましたから、レコード会社としては反対するのも当然です。


ランドフスカの名演。チェンバロの演奏なのでダイナミクスがやはり物足りない。音色の表情付けという点でも限界があります。この曲を聴くのが初めての方は、まずはこの演奏を2、3回聴いてから下記のグールドの演奏を聴いてください。

演奏については、それまでのバッハのイメージを大きく覆す演奏です。ゆったりとしたテンポでしんねんむっつりと演奏されることの多かったこの曲を、ピカソ的な視点で捉え直し、超快速のテンポで駆け抜けて行く。
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しかし、そこにはしっかりと曲を分析し解釈を練られたもので、決してエキセントリックな印象を与えようとしたものではないとアウトテイクを聴くとさらにそう思います。彼の頭の中でゴールドベルク変奏曲を真っ白な気持ちで捉え構築した再現芸術です。各変奏曲の構造を的確に捉え描き分け、しっかりとバッハ及び曲に真価を面白く聴き手に伝えてくれます。エキセントリックなだけでは、半世紀も多くのリスナーに衝撃を与え続けることは無理です。今でも発売当時と変わりなく驚きと感動を与え続けていることが、この演奏の芸術性の高さの証明です。


グールドの1955年演奏。楽譜付きで面白い動画ですね。各変奏曲の間に間が入るので、CDと違い違和感がありますが。

シュタットフェルトというピアニストが同曲を録音し、21世紀に入り「現代のグールド」と一時期宣伝して売り出されましたが、一時的な話題として終わりました。

グールドはグールドであり、他の者には真似できないものです。しっかりとしたバックボーンとなる教養・知識・信念があり、凡人には及びつかない頭脳とテクニックの持ち主なのです。アウトテイクでは、彼の頭の中にすべてのイメージが明確に刻印されており、響きが少しでも違えば弾きなおす。主題のアリアでは20以上のテイクが行われたそうです。

グールドというとエキセントリックなイメージがついていますが、それは間違いです。天才が先人の演奏に敬意を払いつつ、白紙の状態からそれぞれの曲を再現させているだけで、奇を衒って他の演奏家と違うところを見せようという類のものとは決定的に違います。

1981年の録音についてもまた触れますが、ゴールドベルク変奏曲と言えばグールド、グールドと言えばゴールドベルク変奏曲というイメージが固定化されています。もはやバッハの曲ではなくグールドの作品のようになっているかのようです。そんな演奏が20世紀にあったでしょうか?22世紀にも変わらぬ評価を保ち続けるであろうレコード芸術の最上の結実がここにあります。

グレン・グールドのゴールドベルク変奏曲はライブの貴重な録音も残っています。同時期のザルツブルク音楽祭でのライブでやはりグールドも人の子、若干感興のノリがありこちらの方が2枚のスタジオ録音よりも人間味があります。

意外とライブ録音が発掘されないですね、グールドは。発掘されても録音は悪いでしょうが。
・関連記事
バッハ ゴールドベルク変奏曲 グレン・グールド 1959年ザルツブルク音楽祭ライブ

1980年の録音はDVDで貴重な映像記録があり、ヤマハのピアノを自分の求める音にするべくかなり改造しているのがわかります。見た時に「なんだ、このピアノ?」と思いました。演奏はCDと全く同一と思いますが、貴重な映像です。

タワーの方が圧倒的に安いです。3,179円だそうです。
Gould Plays Bach DVD<初回生産限定盤>


強烈なインパクト。若い頃のポゴレリチ的な颯爽とした印象は影も形もないですが(笑)


posted by 悩めるクラヲタ人 at 08:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月15日

ドビュッシー 「ベルガマスク組曲」 フランソワ 1968年録音


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昼とうって変わって涼しい夜に、古のフレンチ・ピアニズムに静かに音に身体を委ねたいなと。
ワインは傾けませんが。

ドビュッシー 「ベルガマスク組曲」(全4曲)
ピアノ:サンソン・フランソワ
1968年 スタジオ録音
録音 4.25点  演奏 4.80点



フランソワの変化と粋を堪能したい方には。

ドイツ系で好きなピアニストはバックハウス、フランス系ではフランソワを挙げます。フランソワに魅かれたのは最近です。同時にドビュッシーの良さに気付けました。きっかけは、クラヲタの嗅覚が働いたこのBOXです。5,000円で入手。

フランソワの魅力は、バックハウスとは全く真逆。洗練されていて洒脱で粋。伝統とは無縁で、デカダンスという言葉がぴったりな演奏家で、どこか背徳的な音色。そのため故か、曲との相性もそうですが、個性的で出来不出来が非常に激しい。その危うさすら魅力になるピアニストです。

コルトーの後継者とみなされていましたが、酒とたばこを愛しすぎ若くして急逝。フランス・ピアニズムの色香を引き継いだ最後のピアニストかもしれません。(後継者と言えるのは今のピアニストでは、ルイサダ位でしょうか)


このフランソワの特徴と特質が生きた演奏・曲が、ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」で、フランソワ晩年は特に出来不出来が激しかったですが、ドビュッシーに関しては良い方向に作用しています。3曲目の「月の光」も絶美の名演で、眩い月の光が降り注ぎは儚く消えていくような、光が壊れてしまうのではないかと感じる演奏。

ですが、「月の光」以上に最後の「パスピエ」が華やかに20世紀中盤を駆け抜けていったフランソワにぴったり。闊歩していくような演奏で、他の誰にも真似できない音色とニュアンス。なぜこの曲が名曲と評されるのか、この演奏を聴いて初めてわかりました。

ドビュッシー初期の作品のため、後年の作品に比べ旋律的で聴きやすいのも特徴です。

「月の光」・・・


こちらも彼の得意としたドビュッシーの「喜びの島」の演奏映像。美しい・・・

このブログでフランソワの演奏もっと聞いてみたいなという方には、枚数は少ないですがveniasレーベルが廉価BOXを出していますので、今はこちらのほうがいいかと。ショパン・ラヴェルがメインで、ベルガマスクは含まれていませんが。


注意事項:フランソワのCDは、できればフランスEMIのCDで購入されんことを。vaniusはおそらくそれを音源にしているので大丈夫。国内盤は全くフランソワの美質があまり堪能できない音質。EMIの録音は、フランスEMIの復刻盤が一番音が良い。クリュイタンス/ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全集、クレンペラー/フィルハーモニアのマーラー交響曲選集でも実証済み。クレンペラーは特に凄い音で復活しています。

最後にフランソワの超名盤クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団とのラヴェルの「左手のための協奏曲」を・・・

これはe-onkyoのハイレゾ音源がお薦めです。フランソワのピアノが弾け、今は聴くことの出来ないパリ音楽院管弦楽団の洒脱な音が堪能できます。



タグ:フランソワ
posted by 悩めるクラヲタ人 at 23:04| Comment(0) | 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月03日

シューベルト 「さすらい人幻想曲」 エリー・ナイ 1964年録音 +キーシンの演奏 


作曲家自身がうまく弾けず、苛立ちのあまり「こんな曲は悪魔にでも弾かせてしまえ」と言ったという逸話が残る「さすらい人幻想曲」。第2楽章の変奏曲主題が自作の歌曲「さすらい人」から採られているので、このような名を冠しています。彼のピアノ・ソナタと違って沈静的なところは無く冒頭からベートーヴェンのソナタ?というような鳴りっぷりで、テクニック披歴に相応しくコンサート映えもするので好まれる曲です。

ただ演奏の雰囲気演奏するピアニストによってかなり印象が異なります。私が最初に耳にしたのは名盤と言われるリヒテルのEMI録音。凄い打鍵だなぁというのと一気呵成に弾き切る彼の全盛期の記録でもあります。録音は当時のEMIならではのオフ気味な録音にもかかわらず強音では少し割れ気味で・・・
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さてドイツの女流ピアニスト エリー・ナイ(1982-1968)。知る人ぞ知る戦前戦後のドイツを代表するピアニストでアルゲリッチ同様女流という言葉の範疇に相応しくないピアニストです。彼女の詳細については過去記事をご参照ください。激しい信念をお持ちの方です。
・エリー・ナイのベートーヴェン ピアノ・ソナタの演奏を聴いて・・・
個人的にはベートーヴェンも得意としていたし、音色的にもバックハウスと似ていると思います。そんな彼女の「さすらい人幻想曲」を。CDとしてが入手難でデジタルダウンロード音源ですが。

シューベルト 幻想曲ハ長調「さすらい人」
ピアノ;エリー・ナイ
1964年録音 彼女82歳!
録音 4.30点  演奏  4.65点


※モノラルの旧録音もあるのでご注意を

彼女の晩年の録音集(ほぼステレオ録音で音質もいい)。AMAZONでもたまにしか出ないし、ヤフオクでも高値です・・・20,000円位が相場みたい。

印象的な「ダーン・ダ・ダ、ダーン・ダ・ダ」というダクティルリズム(長‐短短)の明確でこの曲全体を支配する冒頭の強打がありますがこの冒頭だけでナイの音に惹きこまれることでしょう。ぺダリングが独特かも。その年齢からは想像できない強い打鍵と存在感・風格のある音。この曲は切れ目なく演奏されますが、4つの部分からできています。第1部が勇ましい楽章、第2部が穏やかな緩徐楽章、続いて急速な3拍子の第3部、最後にまた華やかなアレグロで「ワルトシュタイン」にも作りが似ている第4楽章。実質はピアノソナタのようなものですが、その切り替わりのも見事なものです。シューベルトの中でも非常にドラマティックで全体の構成もしっかりと出来ている。

リヒテルの演奏。強打が・・・

ナイのピアノで演奏されるこの演奏は、この曲が作曲されたのが「未完成」を作曲した時期と同時期でもあり、晩年に差し掛かる頃ということもなんだか感じさせてくれます。力強さと第2部や第3部中間部のような晩年のピアノソナタ群の雰囲気もありますので、その辺の表情変化(しかもテクニック難)が求められる。まだ10代神童キーシン時代の演奏が非常に模範的で明晰。

カラヤンとのチャイコフスキー協奏曲、アバドとの合唱幻想曲も入ったいいとこどりのキーシンセット。
録音も良く一般的にはお薦め。安定したテクニックと第2部のような美しいひと時と激しく鳴る部分への切り替えも上手いし、曲に迸る感情の吐露を感じる。ただ・・・ちょっと無国籍的できれい達者過ぎるかなとも。

エリー・ナイのピアノはテクニックの衰えはそれほど気にならない。というかバックハウスやケンプのような技巧の衰えとはほぼ無縁、またハスキルやヘブラーのような弱音の細さもない。ドイツ人のピアニストですと言って聴かせたら「えっ女性のピアニストだったの?」と聴後驚かれること間違いなしです。全体の構成力がしっかりしていて自国の音楽を自信を持って手練れの音楽として演奏している。強打が特徴のピアニストですが芯とコクがありうるさい音色にならない。音色を聴いていると使用楽器は恐らくスタンウェイではなく、ベーゼンドルファーではないかと思います。その影響もあるのでしょう。

「月光」の演奏風景の一部。
矍鑠とした演奏ですなんていうのも失礼な演奏。彼女の得意とするベートーヴェンでもそうですが、全体の構成を考えた解釈で、左手の分厚い響きが非常に生きており、憧れを感じる第2楽章の中間部から後半にかけては音のその低音と高音のコンストラストで聴かせる。強打一辺倒でなく揺らぎない解釈への自信、それに加え音色の変化の巧みさと豊かさ、そして人間味・遊び心のある音色・響き。当然、最後のコーダの仰ぎ見る迫力も圧倒的です。音が割れ気味になっても何のその。でも凡百のピアニストと違い和声がしっかりしているので、耳障りには決してならない魔法。


ポリーニですが、何か?こちらも評判はいい。
ナイの演奏を聴いていると、ポリーニや優れたキーシンでさえ芸格の差というか、手に馴染んだ感が全く違うし、地に足のついたドイツ音楽を聴いたという充足感が他盤との圧倒的な差。

第4楽章では少し乱れもありますが、これも一つの芸・表現かと思わせるようなテンポ変化と溜めのようで効果的。優れた録音で残されたことが本当にうれしい名演です。珍しく音源付けます。
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●第2部

●第4部

彼女のベートーヴェンが聴きたくなりますよね。

MP3アルバムですが、皇帝と熱情がセットのこれを聴いてから、ピアノソナタ 30番~31番に進むのがお薦めです。「熱情」の最後は熱が入りすぎてコーダで1パッセージ多く演奏していて面白いです。
タワーでも在庫僅かみたい。
Beethoven: Piano Concerto No.5, Piano Sonata No.23 エリー・ナイ



忘れれてはならないピアニストの一人。コロッセウム社のCDの安定供給を望みますが、一縷の望みしかない。悲しい時代です。

入手し易く、昔から評価の高いコンヴィチュニーとのブラームス。
でもまずは皇帝と熱情からベートーヴェンは聴くべし。

もうすぐDECCAのハイレゾ音源特別セールも終了ですよ。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 17:07| Comment(0) | 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする