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2017年08月17日

名チェリスト ルートヴィヒ・ヘルシャーについて


表題のチェリスト ルートヴィヒ・ヘルシャーについて知っている方はかなり少ないと思います。記事↓
・ドヴォルザーク チェロ協奏曲 L・ヘルシャー&カイルベルト/ハンブルク国立o 1960年録音
青天の霹靂で、HMVのニュースで「ルートヴィヒ・ヘルシャーBOX」発売!と載っていた時には目を疑いました。しかもオリジナルマスターからリマスタリングをしてCD化、ほとんどがLPでとっくの昔に廃盤で入手不可、国内でも販売されていなかったでしょうし、半分くらいは初CD化ではないでしょうか?この知名度の低く、売れそうにもない企画に取り組んだメーカーには敬意と払います。
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Ludwig Hoelscher - The Complete Telefunken Recordings

即予約・入手してしまいました。最近では稀なケース。1枚あたりの収録時間が少なく、6CDに納められたのでは?と思いますが、発売時LPに合わせたようで、ジャケットとCDのプリント(LPラベル)がまたいい。音質も素晴らしい。

ウィキペディアでの情報。
”Ludwig Hoelscher, 1907年8月23日- 1996年5月8日。ドイツのチェロ奏者。
現在のノルトライン=ヴェストファーレン州ゾーリンゲンで生まれる。6歳でチェロを始め、ケルンで修業の後、ミュンヘンでヴィルヘルム・ランピング、ライプツィヒでユリウス・クレンゲル、ベルリンでフーゴ・ベッカーに師事し、1930年にメンデルスゾーン賞を獲得した。その後は、エリー・ナイの率いるピアノ三重奏団に加わり、1936年にヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会でソリストとしてデビューを飾った。1937年にナチスに入党し、ベルリン高等音楽院のチェロ科教授に就任する。第二次世界大戦後は1953年から1971年までシュトゥットガルト音楽演劇大学で後進の指導に当たりつつ、演奏活動を続けた。1953年に来日している。
門下には、ペーター・ブックやアニア・タウアー等がいた。トゥッツィングにて死去。”

シューベルトの「さすらい人幻想曲」で取り上げたエリー・ナイと同時代を生きたチェリストでドイツでも知る人ぞ知る存在位なのかもしれません。世界を飛び回って大金をなどというチェリストでは無く、素晴らしい演奏家にも関わらず、晩年はもっぱら教育活動と少ない録音しか行っていません。

コンサートも行っていたようですが主軸は教育だったみたいです。ステレオ時代にもっと活躍して録音してくれればよかったのに全く行わず、演奏記録も無い。テレフンケンの後グラモフォンと契約し録音があるにも関わらず・・・フルニエのためにグラモフォンが封じ込めたか?などというあらぬ妄想すらしてしまう。

さりげなく戦後1953年に来日もしていており、記録も残っています。齋藤秀雄(有名な小澤の師です。指揮者としては?)指揮東京交響楽団がバックでシューマンのチェロ協奏曲とほか小品。録音年、そして曲が渋すぎるのと当時の日本オケが合うわけがないとこれは完全にスルー。

高く売るためにハイブリッドSACDで発売だなんてひどい売り方。それにも反抗して。

ヘルシャーで検索をかけると「花の絵」というブログの記事が真っ先に出ます。あまりにも的確なので一部お借りさせていただくと、
”どんな音楽作品でも、それを演奏する者によって、傑作に聞こえることもあれば、凡作に聞こえることもある。そこまで好きになれなかった作品が、特定の演奏家の手にかかるとえもいわれぬ魅力を帯び、また聴きたくなる、というケースもある。ひとつの作品との幸福な出会いとは、同時に演奏家との幸福な出会いを意味する。世に「傑作」とか「名盤」といわれているものが、必ずしも個人にとって幸福な出会いをもたらすとは限らない。”

これほど素晴らしくこのチェリストというか演奏家のことを表した良い文章はない。私なんかが何百文字書いても敵わない。

要はヘルシャーというチェリストは傑作を傑作として、苦手な曲・知らない曲でも魅力的に演奏してくれる稀有な演奏家で、演奏家との出会いにも感謝してしまうと。その通りです。ヘルシャーの演奏を聴いているとすべての録音・曲が傑作にに感じるし、名盤とも感じる。というか、そういうことすら忘れ、スピーカーから流れ出る耳を傾けてしまう。

ドヴォルザークの協奏曲の演奏を聴いた時に「あぁこの演奏と出会ってよかった」、その後テレフンケンとDGGに遺した録音の板起こしCDで滅多に聴かないベートーヴェンとブラームスのチェロ・ソナタを聴いた時もそうで。特にベートーヴェンは「ロストロポーヴィチはこうだった」などと比較しようとも思わず、虚心で聴き入ってしまった。室内楽は苦手と決めつけている私ですが、それも思い込みなのかもしれないと思わせてくれたCDです。

名復刻です。それほど製作されていないと思われ入手難になりつつある。ナイとのベートーヴェンは疑似ステレオ化。音質を比較しましたが、元のモノラルの方がやはりいいと私は感じました。しかし、ブラームスのソナタの人間味溢れ気高い音だこと。

ドヴォルザークの記事で「フルニエの気品も備え、ここぞという時のロストロポーヴィチのような太く強い音も出せる」とヘルシャーについて書きましたが、それ以後に彼のチェロ・ソナタなどの録音を聴きこむにつれ、彼に最も適した言葉は「気高い音を奏で醸す」チェリストかなと思います。

ナイやデムス、リヒター=ハーザーとの共演ということもあるのでしょうが、ドイツ音楽を伝統に根付き自国の言葉でごく自然体に、しかし誇りを持って演奏している。それを矜持として、信念をもって確固たる音を奏でる演奏家です。それを自然体でやれ、聴き手にそれを感じることを強いることなく感じさせる稀有な存在です。

ヘルシャーの動画があることにも驚きですが、ケンプとシェリングという夢のような組み合わせのベートーヴェンのピアノ三重奏曲。リハーサルと実演!この映像DVD化されていないのかな?グラモフォンにはヘルシャーがフルニエに変わった組み合わせの録音なので。必死に探したけど見つからない。

この機会にぜひ再評価されることを望みます。ドヴォルザークの「森の静けさ」「ロンド」がこんなに素晴らしい音楽だったのかと驚くはず。


関連記事
・シューベルト 「さすらい人幻想曲」 エリー・ナイ 1964年録音 +キーシンの演奏
posted by 悩めるクラヲタ人 at 20:11| Comment(0) | 演奏家について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月21日

サー・サイモン・ラトルについて(新ベートーヴェン交響曲全集 序章)


今NHK交響楽団の音楽監督を務めるパーヴォ・ヤルヴィの活躍を見ていると、昔のラトルみたいだと思うのは私だけでしょうか?正直私はN響の指揮者にパーヴォ・ヤルヴィに決まった時、アシュケナージが決まった時ほどではないですが残念な気持ちになりました。世界中のオーケストラから引っ張り凧状態のパーヴォですが、私はあまり好きな指揮者ではありません。昔のラトルと同じ。CDはやたら発売されますが、興味をそそられない。たまに買ってみると損したとは思いませんが、「ふーん」で終わり棚には1枚も残らないし、その後も食指が動かない。
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ラトルはバーミンガム市交響楽団を世界的なオーケストラにしたことがまず有名です。その時の演奏様式は切り口が鋭く、カラフルな音楽を作り出すイメージでしょうか。しかもよくオーケストラを育成だけでなくコントロールして、楽譜の読み込みも深く「おっ今まで聴いたことの無い内声部が聴こえる」というような内容。それを朗々と明快に音楽にする。

このCD位ですか。今でも評価高いのは。
しかし音色はどちらかというとオーケストラの志向もあり明るい傾向で、音のピラミッドとしては逆三角っぽい。低音部はしっかり弾いているが深みがない。バーミンガム時代のCDは評価が軒並み高かったですが、マーラーの交響曲のCDですら今はカタログから落ちている。

まぁそれはその後にウィーンpoやベルリンpoから招聘されることにより、新盤を作り出したから歴史に埋もれたのかもしれません。その後、ラトルにも変化が生まれ、ピリオド楽器志向が強まります。元々その傾向はあったのですが、老舗のオーケストラと対峙していくには、バーミンガムで好きなプログラム(特にマーラーや現代音楽など)をやれなくなり、ベートーヴェンなど古典派をしっかり振れるようにならないと名オーケストラと聴衆に認められないからでしょう。ラトルは楽譜の校訂や演奏法に着目し、しっかり勉強して古典派プログラムと対峙していく方向にシフトしていきます。

最初こそこういうCDで勝負していましたが。家にある彼のCDはこれだけ。

その頂点がウィーンpoとのベートーヴェン交響曲全集。レコード芸術ではかなり評価が高かったと思いますし、一般リスナーの受けも良かった。過激な方向で珍奇な解釈で古楽器オーケストラの演目にになりかけていたベートーヴェン音楽をリフレッシュして現代オーケストラの演目として蘇らせた。私も購入した時には「フーン」ではなく「おっ!」と思いましたが、結局棚から消えました。手練手管を尽くして面白いのですが、感動にまで至らないというのが大きな理由。楽譜をしっかりと勉強して楽譜の校訂までしっかりやっているのはわかるのですが、それに囚われ細かく振りすぎている。ウィーンpoを使っているメリットを感じない全集で、一つ間違えればノリントンとシュツットガルト放送交響楽団の演奏と紙一重。面白いし新鮮なのですが、流れが悪い。

この全集は実験段階ですよ。ベーレンライター版とか版の問題は、ブルックナーに比べれば些末なことで、そんな謳い文句無視して結構。

アバド後のベルリンpo音楽監督として長きに渡り君臨してきましたが、なかなか代表盤と大評判に恵まれない時代でしたね。アバド時代と同じで常にいい音楽は届けてくれるけど・・・と何か一つ足りない。しかしアバドとラトルの違いはベートーヴェンに関しては全集を作る時だけでなく、常に重要な演奏会ではプログラムに取り入れてチャレンジしてきたことではないでしょうか?決して相性の良くないブルックナーは、たまに取り上げる位で無理にレパートリーを広げず、ブラームスやハイドン・モーツァルトなど古典派の音楽に軸足を置かなくてはいけないという意識は他の指揮者よりも明確にあったと思います。


アバドも退任前に全集を録音しましたが、前の全集に比べ良いですが、結局彼の場合はウィーンpoとの全集が一番良かったという皮肉なことに。


すると・・・徐々にラトルの演奏というよりかはベルリンpoの音が変わっていきました。アバド時代の薄い叙情性のある響きにカラヤン時代の低音の響きが加わったとでも言いましょうか。しかし威圧的でオーケストラの能力を無駄に披歴するような音では無い。樫本大進がコンサートマスターになってから徐々にそうなったような気がします。また個々の楽器の音色にも自由度が高まり、どの奏者にもドイツ的な音色感が戻ったような気もします。
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ラトルの指揮もそれに合わせるかのように振りすぎない、オーケストラに任せる音楽をするようになったのではないかと。自然に各セクションが聴き合って見事なアンサンブルで奏でる。そのせいか低弦部がぶ厚くもなってきて気づいたら音がドイツ的な三角ピラミッドになっており、ブラームス・シューマン・ベートーヴェンを演奏するに相応しい音のオーケストラに。
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そのタイミングと今回のベートーヴェン交響曲全集の演奏のタイミングはピタリと合致した。ウィーンpoとの全集はもう過去の遺物、若気の至り的なCDになったと言っても過言では無い。逆に汚点かもしれない。才気に溢れどんな音楽もそれなりに見事にこなす指揮者だった彼は、ドイツのオーケストラで辛抱強くその重圧と戦う中で、逆にオーケストラに鍛えられ聴衆が求める本流の音楽をしっかりと振れる指揮者になったのではないかと思います。今でもたまに振りすぎる、頭で考えすぎる傾向はありますが、今回のベートーヴェン交響曲全集を聴くとそう確信しました。

今回の来日公演ではチケット代が高い(42,000円は確かに)、日本のオーケストラの方とそう変わらないとかの記事がSNS経由で見れますが、このCD(特におまけでダウンロードできるハイレゾ音源)を聴く限りでは、いやいや同じ俎上に上げることすら失礼。往時の輝き・ドイツ的な音は十分取り戻しているし、高次元の各奏者の能力の高さに参ります。金管・木管楽器の音色、ティンパニの巧さが本当に凄い。ラトルにラトルの音楽をやらせていないというか、俺らの音を活かしながらやんなよという自発性が高い。カラヤン手法と同じかもしれませんね。

最近話題になったパーヴォとドイツ・カンマ―poの演奏は新鮮ですが軽く感心はしますが感動しない、ティーレマンのDVDは今聴き返すと恣意的な部分も多いし、これがウィーンpoとでなかったら魅力半減という演奏に感じます。意外と今回のラトルの演奏の方が低音部の切れが良く、良く鳴っている。

私には何がいいのかよくわかりません。口が悪くすみませんが。

今週は車中や家でベートーヴェン漬けの週でした。またラトルに騙されているのではとほかのCDも引っ張り出し聴き比べていたので。いやー疲れました、しかし「もういらないな」と思うCDも出てきました。これだけ録音も演奏(但し英雄と合唱にかんしては?がつくけど)もハイスペックなCD・音源・映像があったら、もう聴かないだろうと。

サイモン・ラトルは正直好きな指揮者ではありません。家にあるのはマーラーの10番だけで、あとは今回購入したベートーヴェン交響曲全集のみ。しかし、彼はロンドン交響楽団に移動しますが、無駄にベルリンpoでの時代を過ごしていなかった証左となる全集であることは間違いないし、21世紀中にこれを超えるベートーヴェン交響曲全集は出るだろうか?とも思います。ティーレマンでもどうだろう。今この全種は入手難状態になっていますが、口コミかなんかで広がり私と同じような人も購入しているのだと思います。来日のタイミングと合致したこともあるでしょうが、失望してたら買いませんよね。

今日もう少しハイレゾ音源でしっかり聴いてみようと思う朝でした。また疲れちゃうけど。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 07:57| Comment(0) | 演奏家について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする