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2018年07月14日

ベートーヴェン 交響曲選集 ジェイムズ・デプリースト/東京都交響楽団 1997−2008年録音


意外と漫画とテレビドラマでクラシックをかじった方のほうが知っているかもしれない指揮者 ジェイムズ・デプリースト。二ノ宮知子さんの漫画「のだめ・カンタービレ」に実名で出てきて、ドラマにも有名指揮者役で出演した。世界的に有名かというと、おそらくオレゴン州と東京都交響楽団のコンサートに通っている方にしか知られていないくらいだったので、二ノ宮さんがなぜデプリーストをその役に抜擢したのか不明。ただ見識のある方だとは、彼の音楽を聴くと思う。通好みの指揮者です。
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1936年フィラデルフィア生まれ、2013年に心臓発作で享年76歳で亡くなる。若いころに患ったポリオの後遺症で電動椅子に乗って指揮せざるを得なかった。しかしその才能はバーンスタインやアンタル・ドラティの目に留まり、彼らの指名でアメリカでのポストも得た。ただし主要ポストを務めたのはオレゴン交響楽団で1980-2003年位。ただアメリカでは非常に評価はされていたようで、2005年にブッシュ大統領から芸術家にとって最高の栄誉であるアメリカ国民芸術勲章を授与されています。
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日本での活躍は主に東京都交響楽団との共演。楽団員が彼の音楽に惚れ込み、度々の競演を得た後2005-2008年には常任指揮者を務めていました。ただ運が悪いのかその渋い音楽性ゆえなのか、その前のベルティーニ時代、そしてその後のインバルとの時代の間、しかもレコーディングも限られていたので知る人ぞ知るくらいの存在で終わってしまった。

フォンテックやEXTONはなぜこの間だけ都響の録音をしなかったのか不思議。非常に骨格がしっかりしていてかつ流れも重要視した、今時珍しい呼吸感で指揮する貴重な存在でした。その証左がこのベートーヴェン交響曲選集によく表れていると思います。

ベートーヴェン 交響曲選集(第3・6・7・8・9番+序曲)
指揮:ジェイムズ・デプリースト
東京都交響楽団
第9の合唱のみ
澤畑恵美(ソプラノ)・竹本節子(メゾ・ソプラノ)
福井 敬(テノール)・福島明也(バリトン)
二期会合唱団
録音  4.35点  演奏  4.55点



第5番「運命」が含まれていないのが残念。録音が一番古いのは7番で1997年。「のだめ」のせいで振らされたのでしょう(笑)この演奏が一番最後の「ブラヴォー」が大きいような気がします。しかし冒頭から包容力と深く広がりのあるトゥッティから全体を見通したゆとりのある音楽が演奏されていきます。

古楽器の影響や勢いで行ってしまえという演奏ではありません。しっかりと譜読みされ自分の頭の中にある音楽を、楽団員にしっかり伝える能力も高かったと思います。第4楽章も低弦が目立たないくらいにしっかりと音楽の土台を支えさせるように配慮されている。

亡くなられた際のアメリカでのニュース映像。

年数は飛んで2004年の第6番「田園」、常任指揮者時代になる2005年の「英雄」。都響との共演歴も長くなり、より音楽がデプリーストの呼吸で指揮する感が高まっています。ここがどうあそこがこうだったなどと書くところがないくらい少し遅めのテンポ設定で懐の深い音楽造りが徹底されて行っています。

「田園」は、特にこの全集の中で優れた演奏だと思います。録音も良くなり音の重ね方などが非常に見通し・流れが良くなおかつ音楽が巨きい。一時代前の演奏スタイルなのですが、古臭さを感じないのはアンサンブルが優れ、メンバーのその解釈への理解と共感高い反応と少し明るめの都響のオーケストラトーンによるところでしょう。とにかく音楽を聴いている間は愉しい。しかし最後には深い満足感と感動に浸れる。

「英雄」も悠然と流れる朝比奈先生を少し思い出しますが、デプリーストのほうが圧倒的に洗練されている。第2楽章は感涙ものです。やはり「英雄」はこれくらい重みのある演奏でなくてはならぬ。

第8番が2008年でコンビの最終期、第9は就任2年目の演奏。どちらも優れた演奏ですが、第9は少し力が入りすぎているかなと思わせる部分もあります(最後のプレティッシモでのシンバルとか)が、合唱陣のまとめ方もうまく緊張感が途切れないテンポの微妙な揺らし、やはり見事な低減楽器による土台に加え、ティンパニが絶妙なアクセントをうまくつけ、この曲の壮大さを力技だけで聴かせない。金管楽器も決して耳に刺さるような鳴らし方をしない。常に俯瞰して演奏を管理・指揮しているのが伺えます。

都響の公式サイトでもデプリーストさんの思い出を今でも掲載し続けていらっしゃる。

演奏全体を聞くと非常にヴィオラとチェロの動き・反応がよく聞こえる。身体の不自由な彼の降る右腕のタクトが見えやすい位置にあることも一因ではないのかなと思うほど。イヤホンで聞いていると立体的でぐんと迫ってくる内声部。今の指揮者によくあるわざわざタクトで指し示して「強く!」と降って出る音ではない。

体の大きいな彼の躯体そのままの懐の大きさと、細部や細かいアンサンブルにこだわらず曲全体を意識大きな流れと呼吸感を作って演奏する(させる)のが、デプリーストの音楽の特徴だと再認識させてくれるCD集です。


過去に紹介した都響創立40周年記念シリーズのラフマニノフでも非常に歌心溢れ、素晴らしい演奏でした。こうやってベートーヴェンもしっかり聴いてみると、さらに彼の芸風・個性をはっきりと感じ取れました。そして久しぶりに解釈だなんだなどと考えずに、自然に身を委ねて虚心になって音楽を聴け、最後にしっかりと感動と興奮を与えてくれるいい指揮者だったなと思います。マーク、フルネ、ベルティーニ、インバル、そしてこのデプリーストと本当に都響は指揮者を見る目がいい。

日本のオーケストラが演奏したベートーヴェンの交響曲録音(ライブですが)でも屈指の名演揃いのCDですが、すぐに廃盤になってしまうのでしょうね。デプリーストという優れた指揮者がいたこと、楽譜やテンポ設定、特定の楽器バランスの変更など小手先のことをしなくても、オーケストラを自然に呼吸し歌わせれば素晴らしいベートーヴェンが今でも聴けるのにという勿体CDです。私もちょっと最初に買うのに躊躇しましたが、録音演奏も良いのでなんで迷ったのか今では思います。

あぁだめだ本当にこのイヤホンを買ってから、大音量でイヤホンで聴く時間が増えた・・・寝る前はもちろん寝ている間はほぼしてますね。(当然途中で寝てしまっていますが)

posted by 悩めるクラヲタ人 at 10:52| ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 フルトヴェングラーのCD聴き比べレビュー


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このブログ記事がやはり一番読んでいただいているのです。今だに人気が衰えないフルトヴェングラーの第9には脱帽。今やフルトヴェングラーの交響曲録音は著作隣接権も切れ、廉価BOXで信じられない価格で手に入る。全集で1,200円切で手に入るのですから・・・昔のフルトヴェングラーの第9は通常LP2枚でしたから3,000円は最低でもしましたから隔世の感があります。

2010年に日本EMIが威信をかけてSACDを作成する際のリマスターテープを使用しているので、音質も悪くないはず。私は輸入盤で下記を所持しているので無視。日本がリマスターしたテープをちゃっかり流用して、ベートーヴェンとブラームスは同様の音源を使用している廉価BOX。

フルトヴェングラーが叩き売られる時代が来るなど想像もしなかった。嬉しいけど、悲しくもある。ビートルズと並ぶEMIの永遠のドル箱録音なのに。

さて棚の中にある中で一番同曲異盤が多いのはベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調「合唱」のCDですが、中でもフルトヴェングラーのCDは一番多い。録音年代順で、個人的な演奏評価と録音評価を5点満点方式でつけてみました。録音については、すべてモノラルなのでつけても3.75点が最高です。

ちなみにフルトヴェングラーは第9を商業用録音していません。すべてライブ録音になります。ほかにもストックホルムのライブなどまだまだ本当はあります。下記のyoutubeは音質比較と最後のプレティッシモの違いを比較するのに、非常にいい動画です。

トスカニーニの演奏がなぜかひとつ入っています。彼の後年の演奏と違い最後の最後がスマート。

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1、フルトヴェングラー指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  1937年5月1日のライブ(EMI)
  録音 2.50点 演奏 3.00点


Archipelで廉価発売され入手し易くなりました。
私が始めてフルトヴェングラーの第9を買って聴いた思い出の演奏です。バイロイト盤と並んで置かれていたのですが、当時はバイロイト盤が神棚級の演奏と知らず、ベルリンpoだからという理由で購入をしましたが、音の悪さに唖然。。SP音源より悪い。フィナーレのコーダは滅茶苦茶早いのだけ印象に残っています。全体的に録音が貧弱過ぎて全く迫力が伝わってこない。廉価でも購入の必要はありません。

2、フルトヴェングラー指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  1942年3月22日のライブ
  録音 3.00点 演奏 4.35点


1に比べ格段に録音技術は進歩し、戦時中ということを考えれば十分鑑賞・評価の対象となる音質。昔に比べリマスタリング効果で良質な復刻で聴けるCDが増えました。
演奏に関しては、直接的な迫力が後年の演奏より強い。付き合いの長い自分の楽団なので、各セクションがフルトヴェングラーの棒に迅速に反応し、オーケストラ全体が一丸となって豪快に鳴りきっている。ティンパニは特に決めるところでしっかり決まっている。超速コーダと最後のアッチェレランドもピチッと終わっている。長年の付き合いだから成せる、さすがの阿吽の呼吸。

が、録音が録音なので全体的な雰囲気・意気込みは伝わってくるものの、音色感や分解度が欠けるのはやはり痛い。録音が優れた後年のバイロイト・ウィーン・フィルハーモニア盤を聴いてしまうと進んで手に取ろうとは思えない。一番覇気と息のあったフルトヴェングラーとベルリンpoの記録としての価値しか今はもうないかなと。

ヒトラーの第9と呼ばれる同時期の録音もあります。録音が悪い。2があれば不要です。


ゲッベルスが最前列で聴いていて、最後に握手します。戦後いろいろ物議を醸した映像。初版はArchipelで上記CDよりも音は劣っています。当然すぐに売ってしまいました。

3、フルトヴェングラー指揮
  バイロイト祝祭管弦楽団
  1951年7月29日のライブ
  (DELTA・日本EMIのSACD)
  録音 3.45点 演奏 4.75点


いわずと知れた「第9」のみならず、フルトヴェングラーの代表盤CD。一期一会の緊張感溢れる演奏。リマスタリングされる度何度も買いなおしましたが音に満足できず。しかし、SACDハイブリット盤がでて、ようやくこの演奏をベストの音で聴くことができるようになりました。DELTAからも板起こしででていますが、そちらはアナログ的な太めの音像、日本EMIのSACD層の音はマスターの音を忠実に再現していて鮮度が高く情報量が多い。気分でどちらを手にするか決める。

まるでアナログ・カートリッジを替えるように(笑)アナログ盤でも所有(仏FALP盤)
個別記事はこちらから↓
・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 フルトヴェングラー/バイロイト祝祭o 1951年 EMI盤


シンバルが激しいウィーンpoとの第9コーダの貴重な映像です。



4、フルトヴェングラー指揮
  バイロイト祝祭管弦楽団
  1951年7月29日のライブ(バイエルン放送協会)
  録音 3.50点 演奏 4.00点


所謂「修正なしのバイロイトの第9」と発売され話題・論議を呼んだ録音。明らかにコーダが全く違い、こちらは、ずれずに「ダンッダンッダン!」と揃って終わる。フルトヴェングラー協会盤CDで所有。修正されていようと、レコード芸術としては、残念ながら3のEMI盤CDの方が感動的である。

当然基本的には3と同じ演奏・解釈ですが慣れ親しんだバイロイト盤が耳に刷り込まれているので違和感が感じられることしかない。フルトヴェングラー協会盤の方がリマスタリングは若干ですが優れている。というか音源そのままの良さがある。

5、フルトヴェングラー指揮
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  1952年2月3日のライブ(ANDANTE)
  録音 3.00点 演奏 3.75点


風格のあるいい演奏ですが、音割れする音質。最後のコーダで一気に音が悪くなるので特に興ざめする。もう少し情報量のある音だったらと悔やまれる。

6、フルトヴェングラー指揮
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  1953年5月30日のライブ(DREAMLIFE)
  録音 3.40点 演奏 4.50


録音のいい5の演奏を聴いているようで、バイロイト盤より情報量の多い録音、それに加えウィーン・フィルの音色も加わり、バイロイト盤に匹敵する演奏。ただし、ヒスノイズを多く残したマスタリング、マイク位置がシンバルに近すぎ過ぎなのが難点。盤鬼 平林氏によればこの音源の出自が不明なのも謎。

ただ第3楽章などに顕著ですが遅さの中にもウィーン po独特のこくとアンサンブルの見事さがあり、こちらの方が風格と品格は高い。最後のフィナーレはこれも早く、録音の加減でシンバルが強すぎ、他の楽器の音がマスクされるが迫力は満点。次の31日盤が出なければ満足でした。

7、フルトヴェングラー指揮
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  1953年5月31日のライブ
  録音 3.65点 演奏 4.65点


昔、グラモフォンからウィーンpo150周年記念CD集の1枚として発売されましたが、その時はあまり話題にならず。録音がこちらもシンバル強め、独唱陣に近く他は籠った音質だったからでしょう。このCDはドリームライフ盤と同じ演奏ではないかと言われていますが、第4楽章のティンパニ追加やミス、アッチェレランドの印象の違いの大きさなどから明らかに違います。音質は低音は少し薄めだが細かい管楽器の音を拾っているし、5よりも分離がいい。第3楽章や第4楽章の歓喜の主題を徐々に織りなしていく弦楽器の綾を非常に細かく、しかもルツェルンのようなデッドでは無い。

31日のCDもやはりマイクがシンバルに近いですが、声に関しては独唱にだけ異様に近い印象で合唱とは少し距離がある。AMAZONレビューにもありましたが、フルトヴェングラーの第9としては1954年の所謂ルツェルンの第9に次ぐ音質かと。個人的には、正直全体的なバランスで言えばこのCDが一番録音状態がいいフルトヴェングラーの第9と言ってもいいと思います。アッチェレランドの迫力は一番好きですし。

この日の演奏の特徴は、第1楽章は演奏開始前の静けさが長く収められていて、霧のように始まる独特の流儀は一番克明に感じられる。第2楽章は、フルトヴェングラーとして比較的おとなしい印象。その代りウィーンpoの管楽器群の音の魅力は、録音も良いことからバイロイトより明らかに上。第3楽章、バイロイト盤のような一期一会的なものには欠けるものの、弦楽器の合奏と掛け合いは素晴らしい。こちらも録音の良さが活き、うっとりとリアリティのある美しさ(バイロイトは幽玄)でウィーンの訛りも感じられる。個人的にはバイロイト盤よりも好きな演奏になります。個別記事はこちら↓
・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 フルトヴェングラー/VPO 1953.3.31ライブ録音

8、フルトヴェングラー指揮
  バイロイト祝祭管弦楽団
  1954年8月4日のライブ(ORFEO)
  録音 2.50点 演奏 4.00点


ORFEOが頑張っても、もうどうにもならない音質。正規のテープがもうバイエルン放送協会にもないのでしょう。残念。
録音がよければさぞかしと思われる、吉田秀和氏が実際に聴かれた演奏。ティンパニがよい演奏をしている。が鑑賞には厳しい・・・ヴィントガッセンのテノールが聴けるのは嬉しいのですが。

9、フルトヴェングラー指揮
  フィルハーモニア管弦楽団
  1954年8月22日のライブ録音
  (AUDITEのSACD盤)
  録音 3.70点 演奏 4.45点


日本語で検索すると・・・

高く損します。検索力って大事です。

フルトヴェングラーの第9の中では、超デッドな録音ですが一番録音がよい。モノラル録音だがかなり上等のレベル。低音がかなりしっかり捉えられていて、響きが深い。SACD化でより鮮明になり、情報量や低音の迫力が増しました。晩年でも枯れていない。

全体的には多少理性が勝る演奏になっていますが、コーダの迫力はこの盤が一番鮮明。デニス・ブレインのホルンが聴けることでも貴重な名演。でも、やりたいことがわかりすぎるというのもちょっとという感じ。やはり響きってある程度必要だと思う演奏でもあります。


録音なら9のフィルハーモニア盤SACDですが、実際に聴く機会が多いのは、総合点で勝る3のバイロイト盤SACD(CD層の音はかなり落ちます)か今となってはライブをそのままの形でバランスの良い音質で聴ける7のウィーン盤CDです。ドラマティックな第9の演奏を求めるならば、フルトヴェングラーの演奏に勝るものはないです。ぜひご参考のほど。

関連過去記事→・ベートーヴェンの第9の名盤まとめ

posted by 悩めるクラヲタ人 at 09:55| Comment(2) | TrackBack(0) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月30日

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 ショルティ/シカゴ交響楽団 1986年録音


増えすぎたCDを整理するために最後に聴いておくかと、ショルティとシカゴ交響楽団のベートーヴェンの第9(2回目の全集録音)を聴いたのですが、あれ?こんないい演奏でいい録音だっけと驚き、売却しないことになりました。もっと筋肉質でうるさい演奏だったと記憶していたのですが、良い録音のせいもあり車で聴いてもいい音でメリハリのあるいい演奏だなぁと思ってしまいました。

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肘がやっかいなんだな。これが。

クラシックをあまり聴かない人に「初めて第9を聴くのに相応しいCDは?」と訊かれたら、すっとこの演奏を薦めるような気がします。この演奏を聴いてから、カラヤンなりフルトヴェングラーなりの演奏を聴くと他の演奏の面白さがわかるのではないかと。

ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱」
ソプラノ:ジェシー・ノーマン
アルト:ラインハルト・ルンケル
バス:ハンス・ゾーティン
テノール:ロベルト・シュンク
指揮:ゲオルク・ショルティ
シカゴ交響楽団&合唱団
1986年 スタジオ録音
録音  4.55点   演奏  4.50点



この演奏を聴くちょっと前にTUTAYAにカラヤンの一番元気だった1970年代の第9がSACDで置いてあったので借りたのですが、「あぁ当時のベルリン・フィルは凄かった、カラヤンの美学も凄かった」とは思えども、ベートーヴェン凄い!とはならなかった。

SACDでよりそれが鮮明に表れた形で最後のプレティッシモの轟然たる迫力は唖然。しかし、数回聴いてコピーすることなく返却。当分いいやと。


このショルティの演奏もそれを想像していたのですが、録音会場がシカゴのシンフォニーホールではなくメディナ・テンプルのためでもあるのか明晰かつ柔らか。第1楽章冒頭などカラヤン同様トランペットが突き刺さって聴こえる時もありますが、カラヤンほどのこれ見よがし的な威圧感はない。ただ正確に内声部に至るまで明晰でクリアでキレがある。そしてそれを演奏するオーケストラの各セクションの技量の確かさとその均質さ。初めて聴く人がスコア片手に聴くには本当に丁度いい演奏です。すべてにおいて過不足が無い。かといって指揮者の名前は挙げませんが凡庸ではなく、聴いていてつまらないと思う瞬間が無い。第9っていい曲でベートーヴェン凄いなと素直に思える。




この演奏を基準にしていろんな演奏を聴けばいいという上質かつスタンダードな演奏と言えます。この演奏に不満があるとすれば、音色が常に明るいため侘び寂びといったものが不足する(特に第3楽章)、第4楽章の男性独唱が少し頼りない(というかノーマンの声の存在感が大きいのですが)位でしょうか。確か最晩年のベームの第9でもノーマンでしたね。

独唱歌手陣の贅沢なこと!しかし、そこにたどり着くまでが大変。

逆に第2楽章の中間部に顕著ですが木管楽器の絡み合いとかは音色感含めて見事で聴き惚れます。全体的によほど入念にリハーサルをしたと見えて、弦楽器録音のバランスが非常に優れていて内声部の刻み一つ一つがしっかり聴こえてくる。それはスコアが解きほぐされて目の前を通り過ぎていくように。それが自然に聴こえる所がショルティとオーケストラ、そして録音スタッフの意図が好調に意思疎通されていたからでしょう。基本的にショルティは職人気質な人ですから。(だからウィーンpoには嫌われたのですが)


レコードアカデミー賞だったかな?レコード芸術さん?

若いころのショルティに比べ丸くなったという声がこの演奏にはありますが、これが本来のショルティの演奏なのではないかと思います。それまでのDECCA録音がデッドなホール(まぁホームタウンですが)の特性により、少しこのメリハリが強調されていたのではないでしょうか?それはそれでマーラーやR・シュトラウスの作品とかには相性が良かったみたいですが。

小音量でもよし、大音量でも決して耳障りになることのない見事な録音ですし、ショルティはちょっとなぁという方に聴いてみて!と言いたいCDでした。まぁでもその他のショルティのCDを買い足そうとは思いませんが・・・彼の録音した廉価CD-BOXの名称が如何にも爆音野郎みたいな「ショルティッシモ」という名称になっていますが、この第9を聴くとなにかショルティが可哀そうに思えるのは私だけでしょうか?意外とショルティのたどり着いた境地ははそこではなかったような気がします。


はたして、今のシカゴsoがこの演奏を出来るだろうか?

ラベル:優秀録音
posted by 悩めるクラヲタ人 at 18:22| Comment(0) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする