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2017年09月24日

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 ペーター・マーク/東京都交響楽団 1990年ライブ

名匠ペーター・マークと東京都交響楽団との「第9」のCDです。1990年と1995年に単身来日して振っていたので、どこかにのこされているだろうと思われていた音源。

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かっこいい。

しかしペーター・マークは一部の人にしか評価されていない指揮者です。シューリヒトのように名声を得ようとは思わず、人生の後半は実力に見合わぬ田舎のオーケストラばかり振っていました。そんな中で東京都交響楽団はよくぞ田舎からマークを引っ張り出してくれたとお礼が言いたい。若い頃のロンドンsoでの名演しか残っていないマークのベストフォームをも引っ張り出してくれたのですから。

ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱」
小濱妙美・郡 愛子
市原多朗・福島明也
尚美学園第九合唱団
指揮:ペーター・マーク
東京都交響楽団
1990年 ライブ録音
録音  4.40点   演奏  4.70点



マークは晩年にパドヴァ・ヴェネト管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集を録音しています。私は飛びついて買いましたが、結果は残念。レビューや一部の目立ちたがり屋評論家には受けがいいみたいですが、さっと売ってしまいました。彼のお得意のメンデルスゾーンの交響曲もベルン交響楽団との演奏が残っていますが、こちらも残念。オーケストラの力量及び録音(artレーベル)がマークについていけていない(これもシューリヒトの辿った道と同じ・・)。特にベートーヴェンは小編成にもかかわらず、ぼやけた音で全く良く思えなかったです。

買わない方がいいです。
またリマスタリングされて再発売されるそうですが、買いません。

それに比べ東京都交響楽団とのライブ録音は優れたものが多い(ブルックナーみたいなハズレもありますが)。だいぶ前に紹介した「スコットランド」も素晴らしいですが、それと同じくらいこの「第9」は優れた出来です。パドヴァ・ヴェネト管弦楽団との録音で期待を裏切られた分を十分取り戻せたと思います。都響はマークが振ると何故か深い音が出てくる。


結構珍しいマークの演奏映像。

さっと早い感じで流していく演奏を少し期待していましたが真逆でした。誰の演奏に近いかというと、フルトヴェングラーの演奏です。第1楽章は風格たっぷりに進みます。少し暖まるのが遅い出だしではありますが、恰幅のあるテンポでしっかりと低弦を鳴らし、ティンパニを強打させています。しかし入念にリハーサルをしたことが垣間見えます。全楽器が決して音を流さない、大事なところではしっかり音に角をつける、第1楽章コーダの独特な(しかし効果的な)弦の刻み方を聴けばわかります。ドラマティックではありませんが、しっかりとした重みがある演奏です。

第2楽章は一転早めのテンポ。ここでもティンパニが効いています。しっかりとアクセントをつけ、細部にも目が行き届いている。木管楽器を上手く際立たせ、ただのティンパニ協奏曲にならないようになっています。これだけ頑張っているティンパニストですが、トリオ前(ワーグナーがホルンを追加した旋律の部分)で打ち忘れるという失態がありますがご愛嬌。楽章後半の同じフレーズのところでは「さっきはごめん」とばかりに忘れずに強打しています。

第3楽章は超スローテンポで密やかにヴァイオリンが歌い始めます。終始細やか。こんなに何回も第3楽章を繰り返し聴くのは久しぶりです。普通に聴いているとゆっくり美しく歌い上げているだけのようで、フレーズごとに強弱を巧みにつけて単調にならないようにしています。なので緊張感を伴った美しく嫋やかな響き。19分近い演奏時間なのでバイロイトのフルトヴェングラーとほぼ同じテンポ。録音が良いのでこちらの感銘度の方が高い。後半の2度目のトランペット警句の強奏と響き方はバイロイト盤とそっくりです。

マークのピアノの師匠はコルトー、指揮の師匠はアンセルメとフルトヴェングラーだったことをふと思い出します(なんという贅沢な境遇)。この楽章、木管楽器と弦楽器の奏で合いをホルンが邪魔しないように絶妙な音色と強さをコントロールしています。


N響と共演したこともあるとは知りませんでした。

第4楽章は90%と95%の力の入れ具合を変えて進みます。冒頭は90%でティンパニで荒々しさを出しながら、木管楽器を明確に聴かせます。テノールの行進曲後から力を入れはじめ、歓喜の合唱の再現部ではテンポを一気に速めるのでオケと合唱団がびっくりしているようについていきます。ここが95%。一瞬?とそこは思いますが、その後の合唱によるフーガ部分とのコントラストを明確にするためのものと後に気づきます。

最後のプレティッシモで100%をようやく出します。早い早い。そして打楽器が豪快に鳴ります。トライアングル・シンバルが際立っていますが、マタチッチなどと違い力技ではないのでうるさくない。マエストーソで大きくテンポダウンし再び一気に駆け抜けるコーダ。これはかなり早い部類。良く東京都soがしっかり鳴ってついていってますし、最後のティンパニ5連打もしっかり決まっている。「ティン・タ・タ・タ・タン!」とクレッシェンドもしているし揃って終わる。ありがとう、都響!

声楽陣のソリストはテノールの声が小さいのが難点位であとは十分。合唱もまずます。最後のプレティッシモの最後の最後で疲れたのか「Götterfunken」が少し音程が悪くなるのは残念。最後の「フンケン」がしっかり聴こえるのは嬉しいですが。

前に取り上げたトーマス/サンフランシスコsoの演奏は「技」が素晴らしいのに対し、マークの第9は「芸」が見事。普通に聞き流しているとわからないですが、良く聴くと細かいところに手が入っている。硬軟織り交ぜ、各フレーズを上手く聴かせるようにしているのがわかりますし、作品全体を通しての設計図がしっかりとある。こう思うと、パドヴァとの録音・解釈はオケの技術に合わせたものだったのかもしれません。

しかし、これはライブならではの名演奏です。廃盤になって欲しくない。

posted by 悩めるクラヲタ人 at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする