2024年10月06日

イングリッド・ヘブラーのシューベルト「即興曲集」 1963年録音

先日、社用車で出かけた際、NHKーFMを流し聴きしていると、なんとも心地の良いピアノ曲が流れてきました。シューベルトの即興曲だということにはすぐ気づきました。ただ昨今のシューベルト演奏と違いウィーンを感じさせる懐かしい響き。WEBで調べると、往年のモーツァルト弾きの女流ピアニスト イングリッド・ヘブラーの演奏でした。どこか納得。
R.jfif
最近のシューベルト演奏は、ピアノ曲は晦渋、交響曲は新全集でデクレッシェンドがスタッカートとなり角が立つ演奏になり、ウィーンの作曲家であることが分かりにくくなっている。この演奏はそういった演奏へのアンチテーゼのようなものが感じられます。

ただヘブラーのCDはモーツァルト以外は廃盤状態。一時タワーレコードの独自企画でこの即興曲集も出ていましたが、今は廃盤。手に入れるには全録音集しかない。

シューベルト:
1. 4つの即興曲 D.899
2. 4つの即興曲 D.935
ピアノ:イングリット・ヘブラー
録音:1963年5月





それは流石に無理と、ヤフオクで入手。昔懐かしいフィリップスの廉価シリーズ グロリアシリーズ(デジパック仕様)の一枚でした。LP時代のフォンタナレーベル位に懐かしいデザインでした。さて内容について。半世紀以上前の1962年の録音にもかかわらず素晴らしい録音です。それもそのはずでフィリップスのヘブラー録音はほぼ名プロデューサー フォルカー・シュトラウスが担当。クナッパーツブッシュのバイロイト音楽祭「パルジファル」も彼の仕事です。ハイティンクの録音も担当していて、ハイティンクは彼にプレイバックや編集は一任する位信頼していたそうです。名ホール コンセルトヘボウを熟知し、フィリップストーンを築き上げたのもシュトラウスの功績です。





ヘブラーのシューベルト:即興曲集は、モーツァルト弾きとして知られる彼女の繊細で洗練された演奏が光る、名演中の名演だと思います。シューベルトはベートーヴェンの系譜と捉えられていますが、本質的な部分はモーツァルト直結の作曲家でウィーン的な明るさの中に慟哭がある。
この演奏には、モーツァルト作品で培われた透明感と美しさが際立っていて、愉悦的なウィーン的な音色もあります。加えて音楽の流れが自然で、情感豊か。シューベルトの即興性を損なうことなく、それぞれの曲の持つ個性を見事に引き出しています。

ウィーン出身のヘブラーならではのウィーン的な気品が、シューベルトの音楽に深みを与えていて、なおかつ普遍的な魅力を持つ演奏です。ヘブラーの柔らかなタッチと美しい音色は、シューベルトの繊細な旋律にマッチしている。強烈な個性はないものの、それぞれの曲が最適なテンポ感で演奏されており、音楽の構造を明確に示す。無駄な装飾を避け、音楽の造形的な情報を大切にした典雅な演奏スタイルが特徴です。下記のyoutubeはLPの板起こしのようでCDよりもその特徴が感じられます。


ヘブラー 30代のこの即興曲集は、モーツァルト弾きとしての彼女の高い技術と音楽に対する深い理解が結集した、聴き応えのある一枚です。録音会場はアムステルダム コンセルトヘボウ小ホールで響きも美しい。シューベルトの繊細な音楽世界を、美しく、情感豊かに表現してます。若き日のヘブラーのシューベルト演奏映像。

最近のシューベルト演奏は、ルプーや内田光子など室内楽曲では抒情性と晩年の絶望感を前面に、オーケストラでも古楽器が主流で輪郭・強弱を明確にしたものが多い。個人的には古いと言われようが、昔の巨匠時代の歌心とウィーンの作曲家という面を生かした演奏スタイルの方が相応しいと思います。とは言え、より録音がよく陰影が深い内田光子さんの演奏も捨てがたいです。気楽には聴くことはできませんが。




posted by 悩めるクラヲタ人 at 19:19| 器楽曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。