2026年08月29日

シューベルト 弦楽五重奏曲 ハ長調 カザルス&ヴェーグ他 1961年ライブ


室内楽曲でしかも渋い曲。弦楽五重奏というだけでも珍しいですが、通常弦楽五重奏はヴァイオリンが2、ヴィオラ2・チェロ1ですが、この曲ではチェロの代わりにヴィオラが1でチェロが2。当然その分響きに厚みが出ます。響きだけでなく、曲もヴィオラ・チェロが活躍するように書かれています。シューベルト特有の耳馴染みのいい旋律がちりばめられた名曲です。

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しかしこの曲はシューベルトの最晩年(と言っても30代前半)の作品。また演奏家の一人であり20世紀を代表する音楽家の一人パブロ・カザルスの最晩年の録音の一つ。その二つかかけ合わさったためか、何とも不思議なインパクトを与えてくれる名演奏です。

シューベルト 弦楽五重奏曲 ハ長調
ヴァイオリン:シャーンドル・ヴェーグ
       シャーンドル・ツェルディ
ヴィオラ:ゲオルグ・ヤンツェル
チェロ:パブロ・カザルス
    パウル・サボ
1961年 プラド音楽祭ライブ録音
AMAZON→ カザルス シューベルト弦楽五重奏曲

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交響曲「グレート」を濃縮したような、魅力的な旋律の連続、そして迫力にも満ちた作品です。シューベルトがモーツァルト並みの天才だったと再認識しました。

録音もリアリティが高く、オンマイクで素晴らしい。

ベームやルービンシュタインに愛され、彼らの葬儀に使用された第2楽章。各楽器の音が漂い瞬いている。単なる伴奏のピチカートでも、カザルスが名器ゴリフラで奏でると意味深く響く。第3楽章の荒々しいスケルツォ、じっくり楽想を刻んでいながらも勢いが感じられる第4楽章。

スターンとの演奏も残されています。美しい第2楽章。

特に終曲部は曲も演奏も圧巻の出来で、室内楽の範疇を越えています。楽器構成にも依るのでしょうが、終始演奏をリードするカザルスとヴェーグのぶつかり合いが見事です。アンサンブルは完璧ではないですし、カザルスの技巧も衰えていますが、ライブながらの駆け引きと緊張感が約1時間の大曲を貫いています。まるで交響曲を聴いたような気持ちになります。

この曲は長調で作曲されていて、魅力的な旋律に溢れていますが、不思議と短調のように聞こえ「諦念」を感じさせられる。生への諦めがつき天国を夢想しながらも、心の奥底で地面に這いつくばり「まだ生きたい」ともいう気持ちが消えない。

この演奏にはカザルスのまだまだ生きる気持ちの強さが込められている。その力強さが抑え込む諦念の反動を生んで、なんともいえない無常感を伴う感動を与えてくれます。

カザルスのスピーチ姿の動画。伝えたいものがたくさんあるのが言葉はわからなくても伝わってきます。「
peace、peace、peace・・・・」、鳥の歌。

シューベルトの悲しみを伴った美しさもいいですが、晩年のしっかりとした構成力と必死に何かに抗う力強さを教えてくれる一枚です。どこかが復活させて欲しいCDです。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 21:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 室内楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月29日

ウェーベルンの弦楽四重奏のための「緩徐楽章(Langsamer Satz)」を聴いて

先週のクラシック音楽館でウェーベルンの「ラングザマー・ザッツ」を初めて耳にしました。日本語では「弦楽四重奏のための緩徐楽章」、英語だとslow movementと訳されます。

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ウェーベルンか、と現代音楽、十二音技法の音楽を聴く耳に集中した刹那、何とも美しく官能的な調べに驚きました。ウェーベルンにこんな甘い曲があるとは。作曲者死後の1962年までは公開されておらず、今でも録音は少ない。Amazonでもほぼ入手難。どうしても欲しくてヤフオクでカルミナ四重奏団のCDを落としました。





例えるとマッチングアプリで知り合った女性、キャリアウーマンでバリバリで完成された女性かと想像して会いに行くと、笑顔素敵な朗らかな女性だった。しかしどこか影と憂いがある・・・聴く前のギャップと聴いた後に残る後引く魅力。内容は新ウィーン楽派の夜明けを告げる、美しい旋律が絡み合う短い曲。新ウィーン楽派の黎明期に書かれた作品でありながら、後期ロマン派の残り香と美しさを内包している。

後期ロマン主義の豊かな響きを保ちつつ、12音技法などの新技法を控えめに取り入れています。結果、聴き手の心を掴む美しい旋律と、現代音楽への橋渡しとなるような革新的な要素が共存する、独特な世界観があります。そこが妖しい魅力を放つ。
 短い楽曲でありながら、その中に込められた情感の深さは圧倒的。特に3連符の多用が目立ち、微妙に2拍と3拍で拍がずれ、不安定な揺らぎを感じさせる。音の密度は非常に高く、それぞれの音が重要な役割を果たしており、何度も聴き返すほどに新しい発見がある。
弦楽器の繊細な響きが、まるで夜空に輝く星々のように美しく輝きます。各楽器の音色が際立ち、それぞれの音が織りなすハーモニーが心を清澄にしてくれます。

現代音楽というと難解なイメージを持つ方も多いかもしれませんが、「ラングザマー・ザッツ」は、その美しい旋律と親しみやすい響きによって、現代音楽への入り口として最適。古典音楽ファンにとっても、新たな発見があるはずです。後期ロマン主義と現代音楽を繋ぐ、この作品の持つ独特な魅力をぜひ聴いていただきたい。心の安らぎを求めている方にもヒーリングミュージックとしてもおすすめ。この作品の透明感のある響きは、聴く者の心を穏やかに包み込んでくれます。

ウェーベルンの「ラングザマー・ザッツ」は、美しい旋律と革新的な要素を兼ね備え、聴く人を魅了する。現代音楽を敬遠されている方にもぜひ一度、この美しい音楽の世界に足を踏み入れてみてください。ウェーベルンの曲は全てブルックナー・マーラーと違い短く凝縮されている。十二音技法になっても技法の駆使方法や展開は凄いのですが、一般の聴き手には受け容れがたい。この曲は唯一の例外かも。


posted by 悩めるクラヲタ人 at 12:00| 室内楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月15日

アルフレート・プリンツのモーツァルト・ブラームス「クラリネット五重奏曲」

20世紀後半のウィーンpoには特徴的な音色を持つ奏者が多かった。所謂ウィーン的な音色。クラリネットの首席奏者アルフレート・プリンツはその代表格ではないかと思います。戦前戦後のウラッハ、その後A・ボスコフスキー、そしてプリンツと優れた音色の系譜がありました。

クラリネットの名曲はそれほどあるとは思いません。モーツァルトのクラリネット協奏曲は有名ですが、協奏曲としてはそれ以外にはあまり頭に浮かばない。ベートーヴェンもブラームスも協奏曲を作曲してません。ただクラリネットの音色というのは魅惑的で、管弦楽曲のソロの部分では魅惑的で哀愁漂う音色が耳をそばだてます。
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室内楽曲の名曲としてモーツァルトとブラームスがクラリネット五重奏曲を残しておりどちらも名曲。モーツァルトの方は晩年の作品で、協奏曲に漂う明朗さと寂寥感のコントラストがより明確で心に染み入る名品。ブラームスの方はより骨格がしっかりしていてクラリネットの音色を生かし、作曲の妙を尽くした曲。

モーツァルト:
1. クラリネット五重奏曲 イ長調 K.515
ブラームス:
2. クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115
アルフレート・プリンツ(クラリネット)
ウィーン室内合奏団
[録音:1979・80年ADD]
この2曲がカップリングされることが多く、プリンツと名コンサートマスター ヘッツェル率いるウィーン室内合奏団の残したCDもその組み合わせ。ステレオ・アナログ録音末期の名録音です。これが1,000円ほどで手に入るとは本当にいい時代です。少し鼻にかかったプリンツの音色、楽想に合わせ濡れた感じ・愁い・哀感・耳に刺さらない突き抜ける高音など多彩な音色で名曲をさらに彩ります。少しも技巧的に感じさせないというのも凄い。

90年代に不慮の事故で無くなったヘッツェル率いる弦楽器群も素晴らしい。80年代のウィーンpoの響きはこんな感じだった。このプリンツとウィーン室内合奏団との録音は2度目の録音。一度目の録音はもう一世代前のコンサートマスターのヴェラーがヴァイオリンを担当していて、そちらは未聴。中野雄氏は著作でそちらのほうがウィーン風味が強く推薦されています。
こちらはアートユニオン制作で長きに渡り廃盤状態。聴きたくなって現在ヤフオクで探し中。
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ウラッハの名盤もありますが、録音状態も考えるとこのDENONのプリンツ盤が一番お勧め。何度聴いても飽きがこず、至福の時を過ごすことができます。それにしてもクラリネットというのは人懐っこい音がする楽器です。
こちらはブラームスの動画。ドイツ的なベルリンpo往年の名クラリネット奏者ライスターで。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 19:04| 室内楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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