表題のチェリスト ルートヴィヒ・ヘルシャーについて知っている方はかなり少ないと思います。記事↓
・ドヴォルザーク チェロ協奏曲 L・ヘルシャー&カイルベルト/ハンブルク国立o 1960年録音
青天の霹靂で、HMVのニュースで「ルートヴィヒ・ヘルシャーBOX」発売!と載っていた時には目を疑いました。しかもオリジナルマスターからリマスタリングをしてCD化、ほとんどがLPでとっくの昔に廃盤で入手不可、国内でも販売されていなかったでしょうし、半分くらいは初CD化ではないでしょうか?この知名度の低く、売れそうにもない企画に取り組んだメーカーには敬意と払います。
即予約・入手してしまいました。最近では稀なケース。1枚あたりの収録時間が少なく、6CDに納められたのでは?と思いますが、発売時LPに合わせたようで、ジャケットとCDのプリント(LPラベル)がまたいい。音質も素晴らしい。
ウィキペディアでの情報。
”Ludwig Hoelscher, 1907年8月23日- 1996年5月8日。ドイツのチェロ奏者。
現在のノルトライン=ヴェストファーレン州ゾーリンゲンで生まれる。6歳でチェロを始め、ケルンで修業の後、ミュンヘンでヴィルヘルム・ランピング、ライプツィヒでユリウス・クレンゲル、ベルリンでフーゴ・ベッカーに師事し、1930年にメンデルスゾーン賞を獲得した。その後は、エリー・ナイの率いるピアノ三重奏団に加わり、1936年にヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会でソリストとしてデビューを飾った。1937年にナチスに入党し、ベルリン高等音楽院のチェロ科教授に就任する。第二次世界大戦後は1953年から1971年までシュトゥットガルト音楽演劇大学で後進の指導に当たりつつ、演奏活動を続けた。1953年に来日している。
門下には、ペーター・ブックやアニア・タウアー等がいた。トゥッツィングにて死去。”
シューベルトの「さすらい人幻想曲」で取り上げたエリー・ナイと同時代を生きたチェリストでドイツでも知る人ぞ知る存在位なのかもしれません。世界を飛び回って大金をなどというチェリストでは無く、素晴らしい演奏家にも関わらず、晩年はもっぱら教育活動と少ない録音しか行っていません。
コンサートも行っていたようですが主軸は教育だったみたいです。ステレオ時代にもっと活躍して録音してくれればよかったのに全く行わず、演奏記録も無い。テレフンケンの後グラモフォンと契約し録音があるにも関わらず・・・フルニエのためにグラモフォンが封じ込めたか?などというあらぬ妄想すらしてしまう。
さりげなく戦後1953年に来日もしていており、記録も残っています。齋藤秀雄(有名な小澤の師です。指揮者としては?)指揮東京交響楽団がバックでシューマンのチェロ協奏曲とほか小品。録音年、そして曲が渋すぎるのと当時の日本オケが合うわけがないとこれは完全にスルー。
高く売るためにハイブリッドSACDで発売だなんてひどい売り方。それにも反抗して。
ヘルシャーで検索をかけると「花の絵」というブログの記事が真っ先に出ます。あまりにも的確なので一部お借りさせていただくと、
”どんな音楽作品でも、それを演奏する者によって、傑作に聞こえることもあれば、凡作に聞こえることもある。そこまで好きになれなかった作品が、特定の演奏家の手にかかるとえもいわれぬ魅力を帯び、また聴きたくなる、というケースもある。ひとつの作品との幸福な出会いとは、同時に演奏家との幸福な出会いを意味する。世に「傑作」とか「名盤」といわれているものが、必ずしも個人にとって幸福な出会いをもたらすとは限らない。”
これほど素晴らしくこのチェリストというか演奏家のことを表した良い文章はない。私なんかが何百文字書いても敵わない。
要はヘルシャーというチェリストは傑作を傑作として、苦手な曲・知らない曲でも魅力的に演奏してくれる稀有な演奏家で、演奏家との出会いにも感謝してしまうと。その通りです。ヘルシャーの演奏を聴いているとすべての録音・曲が傑作にに感じるし、名盤とも感じる。というか、そういうことすら忘れ、スピーカーから流れ出る耳を傾けてしまう。
ドヴォルザークの協奏曲の演奏を聴いた時に「あぁこの演奏と出会ってよかった」、その後テレフンケンとDGGに遺した録音の板起こしCDで滅多に聴かないベートーヴェンとブラームスのチェロ・ソナタを聴いた時もそうで。特にベートーヴェンは「ロストロポーヴィチはこうだった」などと比較しようとも思わず、虚心で聴き入ってしまった。室内楽は苦手と決めつけている私ですが、それも思い込みなのかもしれないと思わせてくれたCDです。
名復刻です。それほど製作されていないと思われ入手難になりつつある。ナイとのベートーヴェンは疑似ステレオ化。音質を比較しましたが、元のモノラルの方がやはりいいと私は感じました。しかし、ブラームスのソナタの人間味溢れ気高い音だこと。
ドヴォルザークの記事で「フルニエの気品も備え、ここぞという時のロストロポーヴィチのような太く強い音も出せる」とヘルシャーについて書きましたが、それ以後に彼のチェロ・ソナタなどの録音を聴きこむにつれ、彼に最も適した言葉は「気高い音を奏で醸す」チェリストかなと思います。
ナイやデムス、リヒター=ハーザーとの共演ということもあるのでしょうが、ドイツ音楽を伝統に根付き自国の言葉でごく自然体に、しかし誇りを持って演奏している。それを矜持として、信念をもって確固たる音を奏でる演奏家です。それを自然体でやれ、聴き手にそれを感じることを強いることなく感じさせる稀有な存在です。
ヘルシャーの動画があることにも驚きですが、ケンプとシェリングという夢のような組み合わせのベートーヴェンのピアノ三重奏曲。リハーサルと実演!この映像DVD化されていないのかな?グラモフォンにはヘルシャーがフルニエに変わった組み合わせの録音なので。必死に探したけど見つからない。
この機会にぜひ再評価されることを望みます。ドヴォルザークの「森の静けさ」「ロンド」がこんなに素晴らしい音楽だったのかと驚くはず。
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