2023年12月15日

ベートーヴェンの交響曲第9番 終曲部(プレティッシモ)聴き比べ


私がクラシック音楽で一番好きな曲の「ここ」という部分は、ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章最後の最後プレティッシモです。演奏効果もさることながら、交響曲の締めくくりとしてこれほど素晴らしい締め方は無い。匹敵しうるのは、ブルックナーやマーラーの交響曲位でしょうか?しかし、指揮者によってこうも違うかという程違う響き方や聴き終えた後の印象が違う。

ということで聴き比べてみましょう。

どの演奏が誰の演奏家は敢えて記しません。80%以上わかる人は、かなりのクラヲタかと思います。フルトヴェングラーの演奏ともなれば、「あぁ、これは何年の何月の演奏だね」と答えられてしまう方もいるかもしれません。一応録音年代順で、まずモノラル録音からです。


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過去から現代に至るまで、最速のプレティッシモは、やはりフルトヴェングラーですね。バイロイトの第9は、板起こしと正規盤の聴き比べも出来るように同じ演奏でも2種入れてあります。

では次にモノラルからステレオ初期の演奏から。


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過去の巨匠時代はここまでとなります。まだまだ個性的な演奏が多いですね。

次は20世紀後半。まだ存命の指揮者も含まれています。ごく一部ですがレアな音源も混ざっています。ジュリーニが2種類入っていますが、どれかわかるでしょうか?スタジオ録音とライブ録音ではこんなに違うのかと驚きました。スカラ座管弦楽団と再録音してもこんないい演奏にはならなかっただろうなと思います。


Takashi_Asahina_1949_Scan10012.JPG
音質は全てステレオになり、だいぶ楽しめると思います。でもあまり違いが無くなって来て寂しい気もしてきました・・・

閑話休題

カラヤンです。普門館のライブで生中継のラジオ録音です。当時ウィーンpoやベルリンpoが来日することは一大事件だった。これエアチェックしてた人凄い。当時はカセットテープも高いし、第9を録音しようとすると、テープチェンジのタイミングとか難しかったですから。第4楽章とかアタッカで演奏されると涙ものでしたね(笑)

最後に20世紀後半から最近の演奏。最初の指揮者の演奏は最後に少しだけリタルダンドをかけています。結構マイナーな指揮者です。販売数が少ないし知名度も低いため、結構入手するのに苦労したCDです。誰か当てられたら重症なクラヲタです。
この第9を蒐集しているホームページから知って手に入れました。凄いCD量です。
白夜営 ベートーベン 第9のCD一覧HP


音は良くなりましたが没個性的に・・・


うーむ、かっこいいですね。マイケル・ティルソン・トーマス。

指揮者の仕事って何なの?同じ楽譜からこんなに違う演奏になるのかと知ることができる面白い部分です。今このコンビなら面白そうと思うのはムーティとシカゴ響くらい?

しかしyoutubeで見た限りではちょっとうーんと。興味のある方は「muti Chicago beethoven」で検索をどうぞ。

posted by 悩めるクラヲタ人 at 08:33| Comment(3) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年12月09日

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 ペーター・マーク/東京都交響楽団 1990年ライブ

名匠ペーター・マークと東京都交響楽団との「第9」のCDです。1990年と1995年に単身来日して振っていたので、どこかにのこされているだろうと思われていた音源。

thL2U94N69.jpg
かっこいい。

しかしペーター・マークは一部の人にしか評価されていない指揮者です。シューリヒトのように名声を得ようとは思わず、人生の後半は実力に見合わぬ田舎のオーケストラばかり振っていました。そんな中で東京都交響楽団はよくぞ田舎からマークを引っ張り出してくれたとお礼が言いたい。若い頃のロンドンsoでの名演しか残っていないマークのベストフォームをも引っ張り出してくれたのですから。

ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱」
小濱妙美・郡 愛子
市原多朗・福島明也
尚美学園第九合唱団
指揮:ペーター・マーク
東京都交響楽団
1990年 ライブ録音



マークは晩年にパドヴァ・ヴェネト管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集を録音しています。私は飛びついて買いましたが、結果は残念。レビューや一部の目立ちたがり屋評論家には受けがいいみたいですが、さっと売ってしまいました。彼のお得意のメンデルスゾーンの交響曲もベルン交響楽団との演奏が残っていますが、こちらも残念。オーケストラの力量及び録音(artレーベル)がマークについていけていない(これもシューリヒトの辿った道と同じ・・)。特にベートーヴェンは小編成にもかかわらず、ぼやけた音で全く良く思えなかったです。

買わない方がいいです。
またリマスタリングされて再発売されるそうですが、買いません。

それに比べ東京都交響楽団とのライブ録音は優れたものが多い(ブルックナーみたいなハズレもありますが)。だいぶ前に紹介した「スコットランド」も素晴らしいですが、それと同じくらいこの「第9」は優れた出来です。パドヴァ・ヴェネト管弦楽団との録音で期待を裏切られた分を十分取り戻せたと思います。都響はマークが振ると何故か深い音が出てくる。


結構珍しいマークの演奏映像。

さっと早い感じで流していく演奏を少し期待していましたが真逆でした。誰の演奏に近いかというと、フルトヴェングラーの演奏です。第1楽章は風格たっぷりに進みます。少し暖まるのが遅い出だしではありますが、恰幅のあるテンポでしっかりと低弦を鳴らし、ティンパニを強打させています。しかし入念にリハーサルをしたことが垣間見えます。全楽器が決して音を流さない、大事なところではしっかり音に角をつける、第1楽章コーダの独特な(しかし効果的な)弦の刻み方を聴けばわかります。ドラマティックではありませんが、しっかりとした重みがある演奏です。

第2楽章は一転早めのテンポ。ここでもティンパニが効いています。しっかりとアクセントをつけ、細部にも目が行き届いている。木管楽器を上手く際立たせ、ただのティンパニ協奏曲にならないようになっています。これだけ頑張っているティンパニストですが、トリオ前(ワーグナーがホルンを追加した旋律の部分)で打ち忘れるという失態がありますがご愛嬌。楽章後半の同じフレーズのところでは「さっきはごめん」とばかりに忘れずに強打しています。

第3楽章は超スローテンポで密やかにヴァイオリンが歌い始めます。終始細やか。こんなに何回も第3楽章を繰り返し聴くのは久しぶりです。普通に聴いているとゆっくり美しく歌い上げているだけのようで、フレーズごとに強弱を巧みにつけて単調にならないようにしています。なので緊張感を伴った美しく嫋やかな響き。19分近い演奏時間なのでバイロイトのフルトヴェングラーとほぼ同じテンポ。録音が良いのでこちらの感銘度の方が高い。後半の2度目のトランペット警句の強奏と響き方はバイロイト盤とそっくりです。

マークのピアノの師匠はコルトー、指揮の師匠はアンセルメとフルトヴェングラーだったことをふと思い出します(なんという贅沢な境遇)。この楽章、木管楽器と弦楽器の奏で合いをホルンが邪魔しないように絶妙な音色と強さをコントロールしています。


N響と共演したこともあるとは知りませんでした。

第4楽章は90%と95%の力の入れ具合を変えて進みます。冒頭は90%でティンパニで荒々しさを出しながら、木管楽器を明確に聴かせます。テノールの行進曲後から力を入れはじめ、歓喜の合唱の再現部ではテンポを一気に速めるのでオケと合唱団がびっくりしているようについていきます。ここが95%。一瞬?とそこは思いますが、その後の合唱によるフーガ部分とのコントラストを明確にするためのものと後に気づきます。

最後のプレティッシモで100%をようやく出します。早い早い。そして打楽器が豪快に鳴ります。トライアングル・シンバルが際立っていますが、マタチッチなどと違い力技ではないのでうるさくない。マエストーソで大きくテンポダウンし再び一気に駆け抜けるコーダ。これはかなり早い部類。良く東京都soがしっかり鳴ってついていってますし、最後のティンパニ5連打もしっかり決まっている。「ティン・タ・タ・タ・タン!」とクレッシェンドもしているし揃って終わる。

声楽陣のソリストはテノールの声が小さいのが難点位であとは十分。合唱もまずます。最後のプレティッシモの最後の最後で疲れたのか「Götterfunken」が少し音程が悪くなるのは残念。最後の「フンケン」がしっかり聴こえるのは嬉しいですが。

前に取り上げたトーマス/サンフランシスコsoの演奏は「技」が素晴らしいのに対し、マークの第9は「芸」が見事。普通に聞き流しているとわからないですが、良く聴くと細かいところに手が入っている。硬軟織り交ぜ、各フレーズを上手く聴かせるようにしているのがわかりますし、作品全体を通しての設計図がしっかりとある。こう思うと、パドヴァとの録音・解釈はオケの技術に合わせたものだったのかもしれません。

しかし、これはライブならではの名演奏です。廃盤になって欲しくない。

posted by 悩めるクラヲタ人 at 10:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月14日

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 トスカニーニ/NBC交響楽団他 1952年録音


昔からフルトヴェングラーの第9と比肩されていたトスカニーニの第9です。ところが、第9の名盤という列にはあまり加わらない名盤です。「楽譜に忠実」と謳われたトスカニーニで、楽譜ではメトロノーム指定が信憑性が低いと言われていたこの時代にもテンポ指定は楽譜に近い。しかし、この第9でも最後の最後に楽譜に忠実でないことを指摘した評論家はいたでしょうか?


トスカニーニは全般的に早いイメージでしょうが、この第9では今の古楽器演奏を彷彿させるテンポ感と熱量・信念が加わって力強い。
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正統的なブロムシュテットの第9も好きですが、最近聴いてなかったなということでトスカニーニを手に取ってみたのですが・・・

「楽譜に忠実」と謳われていたこの巨匠が、こんな第9という名曲にも関わらずかなりスコアに手を入れていたことがわかり、正統的と思われた演奏が今となっては少し奇異に聴こえてしまうとは・・・ベーレンライター版に慣れたせいもあるのでしょうが、それだけでは無い。

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
アイリーン・ファーレル(ソプラノ)
ナン・メリマン(メゾ・ソプラノ)
ジャン・ピアース(テノール)
ノーマン・スコット( バス)
ロバート・ショウ合唱団
指揮・アルトゥーロ・トスカニーニ
NBC交響楽団


こちらは随分とお高くなってしまいましたね・・・

トスカニーニ大全集。

素晴らしい演奏だと認めます。ただ晩年の生硬さが少し強く出すぎている演奏かなと思います。リマスターが進むにつれてその辺が少し和らぎましたが。そして原典主義やベーレンライター版に慣れた耳には、楽譜の変更も随所で行われていることも明確に聴こえる。

第1楽章最初の第1主題の2回目の部分などにすでにティンパニ追加があるのがわかります。後半では弦楽器のキーをオクターブあげるなどの処理もされています。まぁこれは当時の慣例だった部分もありますが、それ以外のところでも細かくやっています。しかし力強い剛直で推進力のある信念に基づいた音作り。

1948年のライブで冒頭。聴こえづらいかもしれませんがすでにティンパニ追加が聴こえる。

第2楽章はワーグナーのホルン追加を思いっきり吹かすくらいで、小気味よいテンポで進みます。ただいつものトスカニーニに比べると斬れ味が少し足りないというのは贅沢でしょうか。斬れ味が少しそっけない。録音と会場(カーネギーホール)によるところもあるかもしれません。8Hスタジオだったらもっとダイレクトに伝わってきたことでしょう。



第3楽章も早めのテンポでフルトヴェングラーの耽美的な解釈を真っ向から否定し、現代の古楽器演奏のスタイルを先取りするかの様なすっきりスタイル。しかし丁寧に楽器バランスをコントロールしたり、うまく歌わせることに細心の注意が払われていて、根本にはイタリアの血が騒ぐカンタービレに溢れている。ただの楽譜と時代楽器に忠実という古楽器演奏とは一線を画すところです。

後半のトランペット警句も意外と弱く肩透かしを食います。がその後の弦の歌心は流石です。

第4楽章。早いスタートでもしっかり楽器が鳴りきっているところは名コンビ。この演奏で一番物足りないのは一番肝心なこの第4楽章かもしれません。テンポは若い頃のカラヤン並みに風を斬るように颯爽と進みます。それにアンサンブル崩れずついていくNBC響のアンサンブルは鉄壁。スコットのバスはまずまず、テノールのジャン・ピアース(ブリテンが好んだ同名ですが別人)はトスカニーニお気に入りのテノールですが、いつも一本調子の歌い方で明暗が無い。合唱団は少し歌わされている感が感じます。

ヴェルディ「諸国民の賛歌」。戦後のイメージを込められた編曲があります。

さて一番の問題は最後のコーダ、アッチェレランド。私が当初このLPを購入しようと思ったのは「きっとトスカニーニだからかなりの速さでかっ飛ばしていくだろう」と予想していたからです。ところが全くの逆で楽譜指示に従っているため遅い。これにはかなりがっくりした記憶が鮮明にあります。ただ最後の最後「タララタララ・タッ・タッ・タッ・タッ・タン」という急激なテンポアップでバッサリ切るところは迫力満点。フルトヴェングラーのハイテンポで「ダンッダンッダン」と曖昧に終わる感じと真逆。この最後の部分でこんなに鳴る演奏はないと記憶します。


それもそのはず、トスカニーニはここで楽器を追加しています。通常最後の「タララタララ」は木管楽器だけで演奏されるので早いテンポだとほとんど聴こえない。ここに明らかさまにトランペットとホルンを追加して重ねています。

この変更を行っているのは、私が知る限りトスカニーニとストコフスキーだけです。だから当時の慣例というわけではないと思います。だから勢い良く鳴る訳です。つい最近まで気にしていなかったせいか、気づきませんでした。
ストコフスキーの明らかに目立つ鳴らせ方を聴いてあれ?っと気づいた始末。

1938年のライブ録音では最後の「タッ・タッ・タッ・タッ・タン」にだけ追加しているように聴こえます。

第九はポケットスコアを持って聞くといろんな発見があって面白いです。少し分厚いですが。確かめてみると「あれ?えー」と思うことしばしば。昔の録音を聴くと特にそう思います。

一家に一冊。我が家の棚の中では芥川作品の横に並んでいます。かなり読み込まれています。

評論家の「トスカニーニは楽譜に忠実」という言葉・信仰は1980年半ばまで論争にもならなかったことには本当に驚き。当時は楽譜がそれほど流付されていなかったことも一因かもしれませんが、明らかに足してるぞという部分は結構多い。楽譜を見ながら音楽を聴くということの面白さと楽しさもたまには必要ですね。


【関連過去記事】
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」の名盤記事まとめ
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 フルトヴェングラーのCD聴き比べレビュー

posted by 悩めるクラヲタ人 at 21:06| Comment(0) | ベートーヴェンの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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