2026年08月16日

マーラー 交響曲第9番 ワルター/ウィーン・フィル 1938年ライブ録音


ワルターとウィーンpoの戦前のマーラー「第9」は未だに語り継がれている名演です。1938年のライブ録音としては驚異的な録音(と言ってもモノラルですが)ですし、戦前のウィーンpoの弦楽器特有の響きが加工無く感じられる貴重な音源です。

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20世紀中盤からバーンスタインなどのようにゆっくりで厭世観たっぷりの演奏に慣らされた耳には、モノラルながら新鮮に聴こえるスッと流れる演奏です。晩年のワルターとも違います。全体的に早いテンポで進みますが、切迫感を感じるのは時代背景が裏にあるからでしょうか。ワルターが若いということもあるのですが。

マーラー 交響曲第9番ニ短調
指揮:ブルーノ・ワルター
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1938年 ライブ録音
AMAZON → ワルター マーラー第9 オーパス蔵

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この演奏会が始まる前には、ナチスによる足音や叫び声による妨害があったなどという話などを知る人ももう少ないことでしょう。ユダヤ人であるワルターがウィーンでも窮地に追い込まれた状態でのライブでした。この公演後すぐに命の危険を感じワルターはアメリカに亡命することになります。家族はナチスにより命を奪われ、ワルターの最悪な時期が大戦が終わるまで続きます。


第1楽章のSP起こしでしょうか。生々しい音。

そんな心の葛藤が表れているような演奏。荒れ狂う心情を吐露しているような激しい斬り込むような演奏です。まだまだマーラーの交響曲に拒否反応を示していたウィーンpoの面々が必死にワルターの棒に応えています。しばしの別れを察知していたかのような暗くて深いトロンボーンの呻きと甘美な音色で奏でつつ時に切先鋭く切り込むヴァイオリンの音。第1楽章だけでも十分な位の聴きごたえがあります。音の悪さは途中で忘れてしまいます。そんな壮絶な響きの中で木管楽器の哀切な訴え。

第2楽章の愛らしいく朴訥な木管楽器に分厚い弦楽器群がコントラストを描いて進みます。第3楽章はワルターが激情に駆られて演奏しています。コーダのアッチェレランドは録音がさすがに物足りなく感じますが、激しい追い込みです。この後の第4楽章を聴くのが辛い。

荒れ狂う第3楽章コーダは圧巻。

第4楽章は早い。20分かからず通り過ぎてしまいます。しかしながら、それ程早いと感じさせず、マーラーの死への恐怖と演奏時にワルターの命への危機感が同期したような音。それをウィーンpoが昇華するように音にしています。鼻にかけたようなヴァイオリンの響きとポルタメントが、曲の重さを美しさへ転換してくれています。

木管楽器に懐かしい音、しかし寂しさ・侘しさがここかしこに聴こえる。それにしても聴衆のノイズがそれほど聴こえないのは不思議です。固唾を飲んで耳を傾けていたのでしょうか。

世界文化遺産に登録されてもいいような戦前のウィーンpoの響きが堪能できる第4楽章。

ユダヤ系奏者がこの後にウィーンpoからも去ることになり、オーケストラの音は微妙に変わっていきます。この演奏会の記録はワルター自身が破棄したいという程、嫌な思い出があったそうです。しかし皮肉なもので、後年のコロンビア交響楽団の演奏よりも評価が高く後世に残るのはこちらの演奏でしょう。上のyoutubeの方の復刻は見事ですね。どこにマイクを置いていたのかと思う程、当時としてはシンバルもグランカッサ・低弦もしっかり押さえている。

80年前の録音ですが、スピーカーの前で聴いているとそんな時間の経過を忘れてしまう演奏。しかし、戦争・悲劇は繰り返してはいけないという思い、そして大戦によって失われてしまったものを思い出させてくれる演奏です。

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2026年01月17日

マーラー 交響曲「大地の歌」 バーンスタイン/ウィーン・フィル他 1966年録音


DECCAの名録音とバーンスタインの若い頃の勢いが相乗効果となっている名盤。キングのストレートに伸びる歌唱と巧すぎるディースカウの歌唱が耳に残り、今でも愛聴するマーラーの大地の歌。個人的には名盤の誉れ高いワルター/ウィーン盤(スタジオ録音とライブ録音とも素晴らしい)同等に好きです。M・T・トーマスやインバルはちょっと淡白で、後はベルティーニかな、聴くのは。

マーラー 交響曲「大地の歌」
テノール:ジェームズ・キング
バリトン:D・F・ディースカウ
指揮:レナード・バーンスタイン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1966年 ウィーンでのスタジオ録音

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テノールとアルトで歌うのが普通ですが、この盤ではアルトのパートをバリトンが歌っています。マーラーもそれでもいいと指定してます。バーンスタイン、キング、ディースカウ。3人とも若いですね。バーンスタインは当時ニューヨーク・フィルとマーラー全集を録音中でしたが、大地の歌だけはDECCAでウィーン・フィルと録音しました。(SONYには後にイスラエル・フィルと録音)

今、CDで聴かずスピーカーからは英DECCAの初期アナログレコードの音が流れています。久しぶりですね、アナログで聴くのは。当時の名録音の一つです。第一楽章最後の「ダンッ!」というところは非常にリアルにマイクが捉えていて、生々しい。

バーンスタインは、まだウィーンと蜜月な関係になる前ですが、少し強引気味にドライブしています。トランペットがジャージーになるところはご愛嬌。勢いだけになるかと思いきや、ウィーン・フィルも艶(あで)で対抗しているのが面白いところ。チェロなど低音楽器もしっかりと美しく収録されているし、所々ウィーン訛りもしっかり刻印されています。
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かっこいいですね。このジャケットの裏表紙。レニーが若々しい。



キングのテノールは非常に伸びやかで好感が持てる声。評価が分かれるのは、ディースカウの方でしょうか。ただでさえアルト版に慣れた耳には違和感がありますし、また巧すぎる(笑)でもアルト版より歌詞が明確に聞こえます。第4楽章中間部の早いパッセージのところは、唖然とするほど早口ですが明確。それで表情もつけて歌っているのは凄い。

今でも名演で名唱とされているワルター/ウィーン・フィルでのフェリアーの正規録音より私は好きです。しかしさすがのディースカウも第6楽章は、ウィーン・フィルの美感に押され気味。LPなので、この楽章だと流石にバチバチノイズが目立つ。でも極楽浄土の響き・・・・

バーンスタインは後に再録音をしますが、この盤は超えられなかったですね。再録音ではアルト版に宗旨替えしてます。バリトン盤にしたのは契約の加減もあったのでしょうか?でもディースカウは、当時EMIからグラモフォン専属ではなかったのでは?謎です。

弟子であるM・T・トーマスはバリトン版(ハンプソン)で録音してます。理由は別のところにあるような気もしますが(笑)SACDで優れた録音と演奏ですが、ちょっとさらっとし過ぎかなと。告別もやはりアルトの方がいいと思ってしまう。

定番はワルターのDECCA盤。当時の録音としては最上。ただ、フェリアーの少しこもり気味の声がちょっと私は苦手。それはCDのリマスタリングのせいでもあるみたいですが。
posted by 悩めるクラヲタ人 at 22:17| Comment(0) | マーラーの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月07日

マーラー 交響曲第4番 グリスト&バーンスタイン/ニューヨークpo 1960年録音


マーラーの交響曲第4番。私にとっての本命盤はこのバーンスタインの旧全集に含まれるレリ・グリストとの演奏です。シュヴァルツコップも見事ですが、天使のようなソプラノとしてはこちらの方が数等上を行きます。

マーラー 交響曲第4番ト長調
ソプラノ:レリ・グリスト
指揮:レナード・バーンスタイン
ニューヨーク・フィルハーモニック
1960年 スタジオ録音


輸入盤の廉価全集です。リマスタリングされて音質良好。

バーンスタインにはアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との再録音盤がありますが、テンポが遅くなりこの曲の可憐さが薄まっていること、第4楽章にボーイソプラノを使用していることがあまりうまくいっておらず、レビューの概ねの評価もこの曲に限っては旧盤支持派が多いですね。



曲については、マーラーの愉しい部分が満載で、演奏時間も1時間未満と非常に聴き易い、初心者にも安心して薦められるマーラーの交響曲です。第1楽章曲頭の鈴の音からのフルートから異次元へ連れて行ってくれます。第2楽章は諧謔的なスケルツォですが暗くなく、第3楽章も冗長になる寸前で留まっていて、美しい旋律の戯れをただ聴き惚れるのみ。第4楽章はソプラノが天上の楽しさを可憐に歌い上げ、カラフルな管弦楽がそれに華を添えます。





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ここでのバーンスタインの演奏は、ノリが良くジャジーな勢いがありこの曲の魅惑的な旋律を存分に堪能させてくれます。当時のニューヨーク・フィルの少し雑な部分も見えますが、愛嬌で済むくらいです。若きバーンスタインのいいところが出ていて、ショスタコーヴィチの第5番と共にバーンスタインの初期の名盤として知られています。

この曲の歴史的な録音ではメンゲルベルクが有名です。

ライブ録音。今指揮者がこんなことをやったら楽団員から総スカンくらう、「さぁはじめるぞ」と譜面台を指揮棒で叩く音まで入っています。メンゲルベルクは、マーラーが認めた演奏家ですが、交響曲で残っているのはこの曲だけ。メンゲルベルクには、一番相応しい曲なのかもしれません。ポルタメントがはまっています。テンポが時折ガクンと落ちるので、顎も時々落ちますが(笑)

この曲の詳しい説明は、バーンスタインにお任せしましょう。マーラー入門にとっておきのバーンスタインの映像。マーラーの魅力の説明と、第4交響曲の第4楽章をレリ・グリストの貴重な映像と共に見ることが出来ます。

このヤングピープルズコンサートは、英語ですが子供にもわかるように、バーンスタインが明確かつ簡単な英語で話しかけているのでいいですね。

後々ブルーレイ化されるかもですが。

最後に少々お高いですが、日本独自のハイブリッドSACDであれば、録音点数は4.50点つけてもいい位にワイドレンジで素晴らしい録音です。グリストの声が本当に可憐・・・廃盤になる前に是非。


レリ・グリストは、カール・ベームにも愛されたソプラノ(フィガロでのスザンナは彼女の当たり役)だったのですが、その後の活躍は不明。当時、黒人の歌手は少なかったですから、もしや・・・とも思ってしまいます。勿体ないですね。
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ラベル:SACD
posted by 悩めるクラヲタ人 at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | マーラーの交響曲名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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